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「すみません。道をふさぐ程だったなんて気づきませんでした。ご迷惑をおかけしたようで、申し訳ないです。」
「いいえぇ。カイザー君も頑張ってますものぉ。…今度は上手くいくといいですねぇ。」
最後のセリフは小さな声で付け足された。
ああ。このひとにはわかってるんだ。どうしてカイザーさんがクルビスさんと出て行ったのか。
笑ってるけど、目には心配そうな光がある。
前は妨害にあったそうだし、情報通のおばあ様はその事もご存知なんだろう。
「荷物よろしくお願いしますねぇ。」
「ありがとうございました。」
丁度の額を払って、しっかりした足取りで戻っていくリイザさんを、頭を下げて見送る。
味方が誰かわからない状況だからこそ、気遣ってもらえることがとてもありがたい。
「心配かけちゃいましたねぇ。おばあちゃんが出てくるなんてぇ、かなりの騒ぎになってたんでしょうねぇ。」
「ご近所の方々には、今度お詫びをしないといけませんね。」
「道もふさがっていたそうですし、きっと仕事にならなかったでしょうね。」
ため息をつくキャサリンさんに、私とデリアさんもため息をついて頷く。
ウワサが情報元だからって、これはやりすぎだ。
前にカバズさんの騒動が起きた時はここまでじゃなかったのに。
どうして、今回だけこんなことになったんだろう。
「うちの転移局は最近ウワサの的ですからぁ、しょうがないですけどぉ。これは困りますねぇ。」
ウワサの的?
そんなしょっちゅうは事件も起こってないはずだけど。
「ああ。お2つにはわかりにくいですよねぇ。北西の地域って、長年虐げられてましたからぁ、ハルカさんが入るって時もそれだけで大騒ぎだったんですぅ。あの監査のことも、数年は放っとかれることが多かったですから、こんな短期間にってウワサになりましたしぃ。さらにデリアさんが入ってぇ、うちの扱いが変わってきたってことが印象付けられてぇ、最近は食堂なんかでもうちの転移局の話が出ない日はないそうですぅ。」
そ、そんなことに。
私とデリアさんの増員って、そんなに騒がれてたんだ。知らなかった。
デリアさんもちょっと顔を引きつらせてる。
喜ぶに喜べないよね。
「だからきっと、皆、期待して来たんでしょうねぇ。次は何が変わるんだろうってぇ。」
次は何が、か。
そうか。何度もありえなかったことが叶ったから、皆今度のことも何かいい方に変わったんじゃないかって期待して来たんだ。
そりゃ数が減らないわけだよ。
薬師通りからも来てたみたいだし、もしかしたら、広場の方のひとなんかも来てたかもしれない。
うわあ。じゃあ、明日も対応が大変かも。
カイザーさんが帰ってきたら、相談しないと。