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「なら何か相手にとって都合の悪いものを見たか聞いたかしたんじゃないか?そして、それを周りに知られたくなかった。でなければ、こんな回りくどいことはしないだろう。」
クルビスさんが私の考えを読んだように意見を言う。
共鳴はもう収まってるよね?何でわかったんだろう。
可能性を考えていけば、同じような結論になるってことなのかな。
都合の悪いものかあ。
「そんなこと、カバズさんもルイさんも言ってませんでしたけどねぇ。気になることがあると、すぐに身近なひとに言っちゃいますからぁ。そういうことがあったなら、もっと早くウワサになってるはずですぅ。」
キャサリンさんはその考えに疑問を持っているみたいだ。
カバズさんとおしゃべりするって言ってたし、その時に詐欺にあった時のことも聞いていたんだろう。
「そうですね。ウワサでもルイさんやカバズさんの証言でも、そのような話は出て来ませんでした。ですが、知らないうちに、ということもあります。」
「知らないうちに、ですか?」
フェラリーデさんの意見にカイザーさんが不思議そうに聞く。
知らないうちに知ってしまうことなんて、普通は考えないもんね。
「ええ。詐欺を行った連中にとって都合の悪いことがあった。しかし、それはカバズさんにとって変わったことでも重要なことでもなかった。という可能性があります。」
「それがいつかウワサになってしまう前に。ってことかあ?」
「それはありそうだな。」
キィさんもクルビスさんもこの考えに賛成のようだ。
言ってないけど、私も同じ意見だ。
後は、カバズさんが何を知ったかだけど、もしかしたら、相手の落とした何かを拾った、とかかもしれない。
サスペンスもので良くあるよね。現場に遺留品。
「後は、何か落としてしまって、それがカバズさんの工房だったとかでしょうか?でも、それなら、物騒な話ですけど、忍び込んでしまえばいいですよね?」
「あ。」
え?私の思い付きのつぶやきに、キャサリンさんが反応する。
もしかして、遺留品あるんですか?
「そういえば…。これこれ。綺麗だろうってカバズさんがくれたんですぅ。ちょうど、例の仕事を引き受けた後くらいに。貰いもので悪いけど、使わないから貰ってくれなんて言ってましたけど、もしかしてぇ。」
「…少しお借りしてもよろしいでしょうか?」
キャサリンさんがポーチから出したのは、組みひもと石を組み合わせたストラップみたいなものだった。
中国の組みひもの飾りみたい。アクセサリーかな?