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それから、クルビスさんとカイザーさんは出て行った。
私は残った方が警備が残るからという理由で、仕事に戻る。
もちろん、警備に関しては、私がクルビスさんにこっそり教えてもらっただけで、他のひと達は知らない。
でも、過去に脅迫があったとしたら、局員だけでいるのも危ないだろうから、警備のひとはいて欲しい。
クルビスさんには怒られるだろうけど、私自身も手を出しにくくする盾になると思ってる。
私に何かしたら、クルビスさんはもちろん、後見のルシェリードさんの怒りを買うことになるから。
「一体何があったんだろうねえ。」
そんなことを頭の隅で考えていると、何度目かの質問に覚醒する。
いけない。次のお客さんが来てたんだ。
あれ。屋台を出してるおばさんだ。
いつもは夕方前にしかこないのに。
「そうですね。…突然のことで、私たちも何も知らされてなくて。心配ですね。」
「ハルカ様にも内緒かい?そりゃあ、一大事だねえ。」
いえ。そういうことでなく。
出来れば、話を大きくしないで欲しいなあ。
「さあ。私はここでは平の局員ですから、知らないことの方が多いですよ。」
「そういえば、入ったの最近だったね。もうずっといると思ってたよ。」
そう言って朗らかに笑うおばさん。
受け入れられてるんだなあって思えて嬉しいんだけど、まだ勤め始めて数か月です。
「じゃ、荷物よろしく。」
「はい。お預かりします。お次のお客様~。」
お待たせしました、って言おうと思った所で固まる。
目の前にいたのはスタグノ族だった。青の一族の男性だ。
この辺にスタグノ族は住んでいないし、以前来たスタグノ族は他の転移局の局員だった。
スタグノ族の見分けって未だに出来ないから、あの時の局員さんかどうかわからないけど、変わったお客さんに周りもざわめく。
「荷物をお願いしたのですが。」
「はい。住所は…こちらですね。」
いつも通りの手順で進めようとすると、送り状の上に小さな紙が乗ってるのに気づく。
とっさに手に隠して、驚きを魔素にも声にも出さないように、つとめて平静にしたつもりだけど、内心は心臓がバクバク言ってる。
『広場に2つ中央に1つ、ここを狙ってます。気を付けて下さい。』
どういうことだろう。
忠告?それとも…。
「おいくらになるでしょう。」
「ええっと、4つですね。」
「では丁度で。『よろしくお願いします』」
一瞬だけ、ビリっとするほど真剣な魔素が手に伝わる。
それでわかる。このひと、本気で忠告に来たんだ。
見上げると、目には心配そうな色。
ああ。そういうことか。
「はい確かに。お預かりします。」
ありがとう。大丈夫です。
今度は負けませんから。
心からの感謝と笑顔で荷物を受け取る。
伝わったのか、ホッとした様子で帰って行った。