5
そんな話も交えつつ、カイザーさんからさっきまでの説明を改めて受ける。
今度はだいぶ簡単な説明だったけど、盗み聞きしてたキャサリンさんとデリアさんにはそれで十分通じたみたいだった。
「ふぅ。そういうことだったんですねぇ。ルイさんの話を聞いた時、ちょっとおかしいなって思いましたけどぉ、ルイさんへの返事が遅れてるだけかなぁって思っててぇ。」
ああ。魔素が揺れてる。キャサリンさんも違和感を感じてたんだ。
でも、確証がなかったから、だまってたんだろうな。
「すみません。キャサリンさんにも確認すれば良かったんですけど。」
「それを言うなら私も…。」
「ああ。いえ、謝ることないですよぉ!ハルカさん達の手続きは正しいんですからぁ。手紙がなくなるのがおかしいんですぅ!昔、違う地区の友達にちゃんとした方法聞いた時にはびっくりしましたけどぉ、出したら届くのが普通ですよねぇ。」
またあやまり大会になりかけた所で、キャサリンさんが慌ててストップをかける。
…うん。そうだよね。そもそも届かないのがおかしいんだ。
「うちは普通とはちょっと違いますからぁ、今回のことは局員の数が増えたなら起こることでしたしぃ。業務を見直すきっかけになりますぅ!何事も前向きに考えましょうぅ!」
明るい魔素が周りを満たして、何だか沈んだ気分が浮かんできた気がする。
すごいなあ。キャサリンさんってムードメーカーだよね。
そうだよね。いつまでも暗くなってても仕方ない。
次のことを考えて、対策を立てなきゃ。
「そうですね。次はちゃんと確認して報告します。」
「私も、確認と報告を怠らないようにします。」
私とデリアさんの決意を聞いて、うんうんと頷くキャサリンさんとカイザーさん。
基本すぎて今さらな気もするけど、環境が変わったなら基本から見直すのは大事なことだ。
「私たちも気をつけますぅ。ねぇ。カイザーさん。」
「ええ。お互いに気をつけていきましょう。幸い、今回のことは契約前ですので、ミネルバ工房に直接出向いて説明すれば、何とかなりそうです。各方面に謝罪は必要ですが、支払いもまだですから賠償問題にまではいかないと思いますし。まずは、シェリスさんとルイさんに事情を説明して、謝罪しなくてはいけませんね。それから、転移局から届け出を出すことにします。」
ああそうだ。今回のことで一番被害があったシェリスさんとルイさんにあやまらないと。
もうカイザーさんが謝ってるかもしれないけど、きちんとした正式な謝罪も必要だろう。
「それなら、先に届け出を出した方がいいのではないですか?」
え。クルビスさん。いきなり何を。
被害者に相談なく勝手に届け出って出来るんですか?