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「おひとつで対処されるつもりですか?」
クルビスさんがカイザーさんに問いかける。
同じことを考えてたのか、クルビスさんも心配そうだ。
「いいえ。今回は味方がいるので、大丈夫です。」
それまでの緊張した表情からふっと目を細めて笑うカイザーさん。
味方がいるんだ。良かった。
「私もお手伝いしますぅ!」
え。キャサリンさん。
後ろには顔色を悪くしたデリアさんもいる。
気になってカウンターから覗いてたんですね。
私も昨日やったから怒れないなあ。
「わ、私も。あの、すみませんでした。確認もせず、勝手に!」
「おふたつとも…。」
「あ、朝の荷物は渡し終わったんで、大丈夫ですぅ!」
泣きそうなデリアさんと、朝の仕事も終えてやる気まんまんのキャサリンさん。
カイザーさんは盗み聞きしてたふたりに呆れた様子だ。
「カイザー局長。このふたつにも聞いてもらいましょう。転移局からの届け出となれば、何があるかわかりませんから。」
「そう、ですね。キャサリンさん、デリアさん、ハルカさん。今日は昼まで臨時休業とします。表を閉めて、それからお話しましょうか。」
「「「はい。」」」
クルビスさんの提案に思う所があったのか、カイザーさんは今日を臨時休業に決めたようだ。
表に休業の掛札は出すけれど、一応、向かいのキャサリンさんの実家にも伝えておく。
「昨日のことがあるから、すんなり聞いてくれましたぁ。」
キャサリンさんがホッとしたように戻ってくる。
これで昼までは大丈夫だろう。
いつもお世話になってます。
ちなみに、キャサリンさんが出ている間に、カウンターの内側にテーブルとイスを出してきて、今はそこに座っている。
荷物がないなら、中の方が広いからね。
クルビスさんは身体が大きいから、この方が楽みたいだ。
「昨日のルイさんはすごかったみたいですしね。転移局に走っていったことは兄まで知ってましたから。」
デリアさんが人数分のお茶を淹れ直しながら、教えてくれる。
デリアさんのお兄さんって、お店結構離れてたよね?
そこまでウワサが届くって。ルイさん、一体どんな走り方したんですか。
これは、昼から対処が大変かもしれない。
「そのようですね。リード隊長やキィ隊長も知ってましたから。」
「そ、そんなに広まってましたか。」
クルビスさんが頷くと、カイザーさんの顔が引きつった。
今日は昼から開けても仕事にならないかもなあ。
「でも、ルイさんが大騒ぎしてるってウワサなら、良くあることですしぃ。きっとすぐ収まりますよぉ。」
どこからか出してきたお茶菓子の追加をテーブルに置きながらキャサリンさんが話す。
よくあるんだ。ああ、そういえば、ルイさんって相棒のカバズさんともよく派手に喧嘩してるんだっけ。