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「はい。ちょうど受付にいたのが私で、その場で受け付けて、そのままデリアさんに送り方を聞いて、広場の方に送ったんです。」
「ああ。そうだったんですね。デリアさんが送ったのだと思っていました。彼はここの事情をまだそこまで知りませんから。」
私の説明に納得したように頷くカイザーさん。
あれ。怒って、ない?
「あの。私が呼ばれたのは、そのことでは?」
「いいえ。クルビス隊長にお話しするなら、ハルカさんにも聞いていただこうと思ったんです。ここの事情は複雑ですから、こういうこともあると知っていただいた方が良いと思いまして。後で、デリアさんにもお話しするつもりです。すみません。最初に話しておくべきでした。」
私よりも申し訳なさそうな顔をして説明するカイザーさん。
いやいや。確認しなかったの私だし。あ。そこ言ってない。
「それでも、報告が遅れて申し訳ありませんでした。初めての作業なら、カイザーさんかキャサリンさんに確認すべきでしたし、ちゃんと業務の報告をするべきでした。昨日、ルイさんが駆け込んできたことで、クルビスさんと話していて自分が間違ったのを知ったんです。」
「本当はその手続きが正解なんですが…。そうですね。これからは、お互い報告は徹底するように気をつけましょう。局員の数が増えるということは、こういうことも起こるということですし。」
カイザーさんは私の謝罪に頷いてくれた。
本当はもっと怒られてもいいのに。いいのかなあ。
「もう十分反省されてる方に、これ以上の言葉は必要ありませんから。」
あ。納得してないの顔に出てましたか。
カイザーさん苦笑しながら、謝罪はもういいと言ってくれた。
「はい。以後、気をつけます。」
本当に気をつけよう。私が知らないことなんてまだまだあるんだし。
もう一度礼をして、ここで報告と謝罪は終わりになった。
「それで、今回の件は届け出るのですか?」
話を切り替えるために、クルビスさんがカイザーさんに話しかける。
今回は、って変な言い方。
「はい。次に紛失があったら、転移局から届け出ることに決めてましたので。」
前の事件は昨日キィさんが言ってたやつだろうから、前にも届出は出てると思ってたけど。
カイザーさんの口ぶりだと、被害者が届け出てようやく表に出たってパターンだったみたいだ。
カイザーさんなら届け出ようとするだろうけど、きっと圧力がかかって止められたんだろう。
今のカイザーさん、何かを覚悟した目をしてるもん。今回の届け出はクビ覚悟ってことだろう。