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そっぽ向くクルビスさんに困ったけれど、そのまま話を続けるわけにもいかない。
ちょうど、切りのいい所だったのもあって一旦部屋に戻った。
その頃にはクルビスさんも普通になってたので、さあ、ミネルバ工房に行く話をしようとすると。
「ダメだ。」
うう。まだ、ほとんど話してないのに。
これだけ関わってたら放っとけませんよ。
ミネルバ工房が困ってるのだって、私が来た時の気温低下がきっかけだし。
私がもっと業務に詳しければ、シェリスさんを困らせることもなかったわけだし。
もし、本当に紹介状が届いてなかったとしたら、シェリスさんの交渉にだって、転移局の誰かが説明に付いて行った方がいいだろうし、私も行ければいいなあって思ってる。
私のミスなだけに、責任感じてるし。
だから、手紙の行方がわかる前に、クルビスさんに一応は話を通しておかないとって思ったんだけど。
手紙が届いてれば良し。無くなってれば、着いて行きますよ~。ってくらいで。
「ハルカは忘れたかもしれないが、俺の夢はまだ消えていない。」
忘れてませんよ。
調理器具が一杯の場所で、淡い紫の女性の傍で私が倒れるって夢でしょう?
あれ?
紫の女性はシェリスさんかもなあとは思ったけど、調理器具…。
「夢の通りになりますね…。」
「そうだ。ミネルバ工房は一般的な調理器具の販売も行っている。壁にたくさん調理器具も並んでいるだろう。夢と同じ状況だ。俺は行かせたくない。」
ううう。それ言われるとなあ。
クルビスさん、ずっと私が倒れる夢を見ていて、ずいぶん悩んでいたしなあ。
イシュリナさん達もとても心配してくれたし、危険だってわかってる場所に自分から飛び込んでいくってバカだよね。
そりゃ、ミネルバ工房が問題の夢の場所かって言われると自身はないけどさ。
でも、今回の騒動では私が関わってることといい、その場にいてもおかしくなくなっちゃてるし。
シェリスさんもいるし、夢の調理器具一杯の状況にぴったり当てはまるし。
クルビスさんが夢で見る調理器具がたくさんな状況って、棚に幾つも調理器具が並んでるみたいなんだけど、料理教室の収納は調理台の下にあるのであって壁にはなかった。
でもお店なら、壁の棚に商品を陳列するのは普通のことだ。
「そう、ですよね。」
「ああ。わかってくれ。」
うーん。気になるけど、この状況では行きたいって言えない。
でも、行くことになるんじゃないかなあって思うんだよね。なんとなくだけど。
クルビスさんの夢がずうっと続いてるのも、現実に起こってしまうからなんじゃないかって思うし。
うん。そんな気がする。