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「では、紹介状は北西の転移局から出したのですか?」
混乱してる私に、フェラリーデさんが食いついてくる。
え。そりゃ、北西の地域のお店ですから、最寄の転移局からだすでしょう。
「はい。シェリスさんが見積もりの依頼と一緒にうちから出しました、けど。…あの、クルビスさん、届いてないかもしれないって。」
どういうことなんだろう。
だって、シェリスさんの見積もりの依頼の返事はちゃんと届いたし。
「それって、別々の封筒でか?その、普通に使うようなやつで?」
今度はキィさんが食いついて来た。
え。そりゃ、シェリスさんのやつとルイさんのだから2通だし、封筒もこれといって変わったところもなかったけど。
「そうですけど。これくらいの普通の大きさの封筒でした。あの、それが何か?」
私の質問に3隊長がそろってため息をつく。
えええ。何?何?
「最近無かったから、うっかりしてたぜ。」
「最初にお聞きするべきでした。」
「すまない。俺も思い込んでいた。だが、いつまでもこんなことがあっては困るな。今回は取り引きに実害が出ているから、責任は追及出来るだろう。今度こそ、はっきりさせないとな。」
ええっと。
この雰囲気からして、最近はなかったけど、北西の転移局からの手紙なんかは届かないことがあるってことかな。え?本当に?
「昔から、立場の弱い小さな転移局であったんだが、大きさのある荷はともかく、小さな手紙なんかだと、違う場所に送られていたり、紛失して行方不明になっていたりということがあったんだ。特に、北西の地域はそれが多くてな。守備隊の方でも相談を受けることがよくあった。」
頭の中が疑問符だらけの私にクルビスさんが説明してくれる。
はあ。まず紛失するっていうのがわからないけど、手紙は無くなることがあった、と。
「結局、探しても肝心の手紙は履歴も出てこなくてなあ。証拠不十分で訴えることも出来ずじまいさ。そんなことがあちこちであって、手紙なんかの小さいものは大きな転移局でまとめて管理されて追跡できるようになったんだけど、今回みたいに取り引きが絡んでるものはなあ。」
それを引きついで、キィさんが結局手紙は見つからなかったことを教えてくれる。
追跡機能なんてあるんだ。初めて知った。
「ええ。シェリスさんは南地区から来たばかりの方だそうですから、早くやりとりするために、近場の転移局を使おうと思われたでしょう。封筒には北西の転移局の消印がつくでしょうから、目についたでしょうね。追跡の術式は大きな転移局で集めてからかけられますし、その前に抜き取れば…。」
最後にフェラリーデさんが今回起こったことの可能性を挙げていく。
うわあ。何だかなあ。差別があるからってそこまでする?
「ほんっと姑息だよなあ。まあ、それでな?昔から北西の地域にいる連中は、見積もり依頼と紹介状を大きな派手な色の封筒に一緒にいれて、大きな転移局に直接出しに行くんだよ。
受け取りは今のシステムなら北西の転移局で問題ないから、出すのだけちょっとした手間なんだ。さっきまで、俺たちはそう思って話を聞いてたんだよ。」
つまり、私が「一緒に出した」って言ってた部分を「同封して出した」と勘違いしてたわけだ。
私は私で、宛先が一緒、封筒が別々でも届いてるだろうって思っていたけど。
「すまないハルカ。俺もそう思ってた。見積もりが届いたなら、同封された紹介状も届いてるだろうと。なのに、何故、紹介者に何も連絡がないのかと不思議だったんだ。」
キィさんが話の食い違ってた部分を説明してくれて、クルビスさんが謝ってくれる。
クルビスさんも当たり前過ぎて、同じ勘違いをしてたみたい。
そうなると、別々の封筒で出されたルイさんの紹介状は、最初から届いていなかった可能性があるってことだ。
何それ。手紙が届かないって、そんなの私も思ってなかったんですけど。




