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本日の魚定食はトムヤムクンみたいなスパイシーなスープと魚のフライ、それにマリネのような酢づけもついてきた。
もちろん果物もボールに一杯ある。
酢づけといっても、さわやかな香りがするから何かの果汁かもしれないなあ。
まあ、それはともかく。
「美味しそう。頂きます。」
「頂きます。」
いつもみたいに膝に乗せられて食事を始める。乗せられるだけで、自分で食べられるようになったけどね。
もう普通になってしまった光景に、私も違和感を覚えなくなり、周りもスルーするようになった。
絶対慣れたりしないって思ってたのに、自分も変わったなあと思いながらスープをすくってひと口。
途端、いろんな味が口の中で弾けて、身体が熱くなるのを感じる。
魚のスープっていっても、魚の味がわからないんですけど。
でも、濃厚なスープだっていうのはわかる。美味しい。
これくらいの辛さなら、食べられるかな。
クルビスさんは辛いのは平気なのか、もくもくと食べている。
でも、目は細めてるから、美味しいんだろうな。
最初はさっさか口に放りこむだけって感じだったけど、変わったよねえ。
「ん?ハルカ、何か食べたいのか?」
いえいえ。おかまいなく。
ちょっと見てただけですって。ホント、魚のフライとか口に持ってこなくていいから。
あ~。しまったなあ。しょうがない。
パク。もぐもぐもぐ。あ、美味しい。
ちょっとクセのある独特のハーブがまぶしてあって、それが魚の臭みを消してる感じだ。
パクチーに似てるかも。この香りは苦手なひともいるだろうなあ。
あ。また魚が口元に。
クルビスさん、自分の食事もして下さいって…。ん?
「クルビスさん、これ苦手ですか?」
小声でそっと聞いてみる。
答えは沈黙。
図星かな。
ん~。まあ、いいか。
香りがきついからか、元の魚の数が少ないからか、フライは2つづつしか入っていない。
これくらいなら、食べられるだろう。
好き嫌いは良くないと思うけど、これはクセがあるからねえ。
パク。もぐもぐもぐ。パク。もぐもぐもぐ。うん。美味しい。
「はい。あ~ん。」
お返しに果物を差し出すと、そっちはすぐに口にする。
うん。やっぱり嫌いなんですね。
覚えとこう。クルビスさんはパクチーは嫌い、と。
和食になれてるからかもなあ。気をつけよう。
「いいなあ。俺も嫁さんに会いたい…。」
あらら。いつの間にか、キィさんがしょげちゃった。
忙しくて、外に家を持つ隊士さん達もここの所泊まり込みだったもんね。