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「そもそも、どうしてこんな回りくどい方法使ったんだろうね~?」
普段の口調に戻ったメルバさんが首を傾げる。
そうだよね。なんで魔素を暴走させようとしたんだろう。
かなり危ないことなのに。
範囲が広い暴走なら、自分だって巻き込まれたかもしれないし。
そこまでして…。もしかして、口封じ、とか?
まさか。ちょっと詐欺にかけようとした程度の技術者を口封じなんて。
まさか、ね?
いやいやいや。ないないない。うん。ないって。
「ハルカ。考えがあるなら…。」
クールービースーさーん。
余計なこと言わないの。ただの思い付きなんだから。
「まあまあ~。ハルカちゃん、とりあえず言っちゃいなよ~?」
いや、メルバさん。そんな軽いノリで言われても。
内容が重すぎるし。思い付きですし。
「どんな些細なことでもいんですよ?何か我々と違った観点から気づいたことがあるなら、遠慮なくおっしゃって下さい。」
「そうそう。情報は一つでも多い方がいいしな。」
フェラリーデさんとキィさんまで。
ううう。言ったら笑われるだけなのに。
「お願いします。ハルカさん。」
「お願いしますぅ。カバズさん、また狙われちゃうかもしれないじゃないですかぁ。あんな、気持ち悪い術を使ってくる相手ですぅ。きっとしつこいですよぉ。」
さらにカイザーさんとキャサリンさんが参加してきた。
キャサリンさんの魔素には怯えが見える。
きっとあの術式が起動した所を思い出してるんだろう。
また狙われる?そうかもしれない。
キャサリンさんは私と一緒にあの術式がカバズさんを覆う所を見ている。
あのまとわりつくような、生き物ような不気味な動き。
あれは絶対に良くないものだ。
しかも失われて久しい術式を組み変えてまで使ってる。
そんなものをわざわざかけた相手が、カバズさんが生きていると知ったら?
術式が敗れたと知ったら?
また術式をかけに来るかも?
それとも、もしかしたら、もっと過激な方法で?
やだ。どんどん悪い方向に考えがいっちゃう。
でもでも。なんとなくで思ったことを、こんな大事な場で言ってしまっていいんだろうか?
そんな私の迷いと不安を読み取ったのか、クルビスさんが腰に回した手に力をいれる。
ギュッとされて、ぽかぽかしてきた。また勝手に共鳴して。
「大丈夫だ。思ったことを話してくれればいい。それが結果として何もなくてもかまわない。ただ、ハルカの勘は当るからな。」
クルビスさん。フォローするか、プレッシャーかけるかどっちかにして下さい。
でも、ありがとうございます。ちょっと、気持ちが軽くなったかな。
「えっと、では、突拍子もない話に聞こえるかもしれませんが。」
前置きして、深呼吸する。
ただの思い付きだ。それもそうであって欲しくないっていう内容の。
でも、もしあっていたら。
その通りだったとしたら。
「カバズさんは口封じに術式をかけられたんじゃないでしょうか?」