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「ふう。お話はわかりましたが、見積もりは正式なものですから「だから、それがおかしいんだって!」」
考えを終えたカイザーさんが静かに結論を言おうとするのを、ルイさんが遮る。
いやいや。最後まで話は聞きましょうよ。また魔素が飛んじゃうのに。
「ルイさん。ルイさんがおっしゃるのは先代のご店主でしょう?今はこの『ミネルバ工房』はお婿さんがついでらっしゃるのですから、発注は外注になりますよ。」
あ。ちょっとわかった。
ルイさんが紹介したお店は、先代までは自分の所で作ってたんだ。
それが、お婿さんの代は売る方を重視して、作らなくなったと。
だから、シェリスさんの所に来た請求書はかなりの値段に跳ね上がった。
そして、カイザーさんの反応からすると、その値段は妥当なものなんだろうな。
だから、ルイさんは納得してないけど、カイザーさんとシェリスさんは仕方ないと思ってる。
「そう、だけどよ。でも、一括なんて無理だろ。どこもここまでの取引なら何回かに分けるもんだ。」
「それは、そうなんですよね…。シェリスさんはこのお店に行かれたことは?」
「いえ、手紙でルイさんの紹介状と一緒に送りました。周りのお店の方も、それで発注していたとおっしゃるので。その、1つで大通りに出るのは、怖かったものですから。」
…まだ、お客さんこないよね?まだ聞いててもいいよね?
あ。キャサリンさんも頷いてる。うん。気になりますよね。
デリアさんもカウンターの整理をするフリをしつつ、身体はこっちに傾いてて、聞き耳は立ててる感じだ。
話し込んでる3人はカーテン開けてることも忘れてるみたいだけど、まあ、いいか。
「そうでしょうね、女性1つで大通りを歩くのは危険ですから。」
「だから、あの店を紹介したんだよ。」
話はまだ続いている。
結局の所、シェリスさんがお店に直接行かずに発注したからこうなってるわけだけど、確かに、あの通りをひとりで進むのはきついかも。
私だって、買い物で大通りに出た時は、アニスさんとシードさんの護衛付きでようやくって感じだったし。
噴水の日だったってことを差し引いても、ひとも多かったし、周りの体格が違った。
きっと、私が気付かなかっただけで、身の危険は結構あったんじゃないかなあ。
物取りとかいたかもしれない。
シェリスさんも大柄というわけじゃないし、大通りじゃ周りがよく見えないだろう。
そんな状態じゃ、お店にたどり着くのも一苦労だ。