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中で何を話してるのか気になったけど、お客さんが次々と来たのでその対応に追われるようになる。
それもひと段落した頃に、ようやくカイザーさんが出て来た。
「ふう。すみません。お茶をいただけますか。3つ分。」
「はい。」
取りあえず、一番近くにいた私がお茶を淹れに立つ。
お湯を入れてムラしてる間に、開けられたカーテンの中をこっそり見てみる。
ん~。シェリスさんが落ち込んでる?で、ルイさんは難しい顔してるなあ。
良くないことでもあったのかな。また差別とか?
「終わりましたから、手伝いますぅ。茶器とお茶菓子、お出ししときますねぇ。」
「お願いします。」
転移陣での荷物の受け渡しが終わったキャサリンさんが、手を洗いながら手伝いを申し出てくれる。
用意してる間に混んでしまうといけないから、ありがたく手伝ってもらった。
「さあ、どうぞぉ。お砂糖かかってますけどぉ、細く切ってあるんで、食べやすいと思いますぅ。今年は良い出来だそうですよぉ。」
「ああ。ありがとう。魔素が減っちまったから、丁度いいや。」
「ありがとうございます。…美味しい。」
ドライフルーツの砂糖漬けは好評みたい。
さ、お茶も出来たし、持っていこう。
「お待たせしました。コック茶です。」
口当たりのさっぱりしたお茶で、味は麦茶に近い。
香ばしく、暖かくても冷たくても美味しいので、夏の定番のお茶だそうだ。
本物の麦茶だと煮出さないといけないけど、これは普通に茶葉で入れるからか、実際の麦茶より味が薄いようにも思う。
味覚が敏感なシーリード族にはこれくらいでいいのかもしれないけどね。
ちなみに、うちの転移局では一日中冷房がかかってる関係でお茶はかならず暖かい物にしている。
身体を冷やし過ぎると、種族関係なく体調を崩すというのがその理由。
少ない数で、滞りなく営業するには日ごろの健康管理が必須ですから。
外から入って来たルイさんとシェリスさんも、中で話し込むうちに身体が冷えたのか、暖かいお茶を喜んでくれた。
「良い香りですね。」
「コック茶か。夏はやっぱりこれだよな。」
シェリスさんはお茶の香りを気に入って、ルイさんはコック茶そのものが好きみたい。
それとは対照的なのがカイザーさんだ。
さっきから目を瞑って、静かにお茶を飲んでいる。
何か問題があったんだろうな。
カイザーさんはご近所さんのトラブル相談にも乗ってるから、こうしてルイさんも駆けこんだんだろうし。
シェリスさんのことなら、前が酷かったから、今度は何かいい解決策が出るといいんだけど。