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それから、だんだんと増えるお客さんを捌きつつ、ノートが一杯になりそうなことに気づいた。
これは一時利用のノートだけど、技術者さんが多いから、荷物のやり取りの数が多いんだよね。
「新しいノートを作らなくてはいけませんね。」
隣でカウンターをしていたカイザーさんがポツリとつぶやく。
こちらは毎日来る店舗用のノート。手にしたノートのページはもう下の方の少ししかスペースがない。
「もうすぐ一杯になってしまいますもんね。」
「ええ。毎年お店は増える一方ですし、来年はもう1冊増やさないと対応できないかもしれません。」
それはありそうだなあ。
シェリスさんやデリアさんのお兄さんみたいに他の地区から引っ越してくるひとも多いみたいだし、お店はまだまだ増えるだろう。
子供が生まれにくい世界だから、増えるといっても年数人、お店なら年1、2軒くらいかな。
最初は少ないと感じたけど、他の場所では数年から数十年顔ぶれが変わらないこともざらだと聞くから、多い方だと理解できるようになった。
少しずつ、でも確実に増えていく顧客ノート。
良いことなんだけど、このままだといずれ不便なことになるだろう。
特別営業期間の時だって、ノートの記載を先に済ませてもらってるだけで、作業がかなり楽だった。
あれをノートじゃなくて、バラバラに出来てまたまとめ直せるようなものに出来ればいいのに。
もっと、こう、バインダー的なものにルーズリーフを挟むように出来れば、ああいう一時的な繁盛期はもちろん、1年で数冊に分けてノートに記録を取らなくても、店ごとに1年で管理出来るんじゃないかなあ。
何かあった時に、見返すことの出来る記録は必要だと思う。
今度メルバさんに相談してみようかなあ。
ルーズリーフなら、普通に事務処理とかいろいろ使えると思うんだよねえ。
あ。でもルーズリーフをどう説明していいかわかんない。
宅急便の送り状の話だって、文字の転写の部分が説明出来ないばかりに、結局再現する前に話を聞いてもらったクルビスさんに止められたし。
忙しいメルバさんの時間を取るなら、それなりに実のある話でなくちゃいけないそうで、それはその通りだと私も思った。
う~ん。実物があれば話もしやすいんだけど、こっちに来た時バインダーは持ってなかったはず。
何か他に残ってないかなあ。
あ。そろそろ夕方の荷物の引き取りの時間だ。
ノートはっと…。うーん。クルビスさん達に見せた小物以外にも、書類が幾つかを入れたクリアファイルがあったけど、あの中は…どうだったっけ。思い出せない。
で、一時利用のノートはもうあまり来ないからまとめて置いて、よし。
うーん。虫干し替わりに中を出し入れしたりはしてるけど、ファイルの中の書類までは見てなかったなあ。
何入れてたんだっけ。
帰ったら見て見ないと。
そんなことを頭の隅で考えながらノート整理をしていると、どかどかと耳に騒がしい音が聞こえる。
ん?うちの前で止まった?お客さん?
「聞いてくれよ!」
あ。ルイさん。こんにちは。
とりあえず、落ち着きましょうか。