3
魔素も補給出来た所で、カイザーさんとデリアさんと交代して、今度は私がカウンター業務につく。
そろそろ昼すぎのの荷物の引き取りで混む時間だ。取りやすい所にノート出しとこ。
「こんにちは。」
涼やかな声に顔を上げると、ラベンダーカラーの美人さん、シェリスさんが立っていた。
ヘビの一族の特徴である大きいラベンダーの尻尾が日の光を反射してキラキラしている。
「シェリスさん。こんにちは。珍しいですね。この時間に。」
私はノートを用意して、シェリスさんに話かける。
シェリスさんは軽食の出来るカフェをやってるけど、お酒は出さない店だから昼から荷物を引き取りに来ることはめったにない。
以前、調理器具を引き取りに来たことがあったけど、あの時は壊れてたしなあ。
結局、違う店に買いに行くことにしたそうだけど、結局どうなったんだろう。
「はい。調理器具の見積もりが届いていると思うんです。」
「じゃあ、手紙ですね。」
「はい。」
ノートの記載を目にしつつ、手紙をしまっている引き出しを漁る。
手紙は大きい転移局が主に扱っているから、北西の転移局には滅多にこないけど、お店同士のやり取りなどで、空いた時間に手早くやり取りしたい場合なんかは最寄の転移局に届けられる。
シェリスさんの場合は、注文した器具が作れるのか、もしくは発注したりして取り寄せられるのかという返事だろう。
技術者さんが店主で自力で作れる場合は費用も安いけど、お店を通して別の技術者さんに注文することになると、仲介料で費用がかなり掛かってしまうこともある。
だから、事前にこういう商品が欲しいとお願いしておいて、実際の費用はどうなるのか見積もりを出してもらって、それに満足すれば発注するという流れらしい。
一般用の規格品はどのお店でも置いてるけど、耐久性を考えると、プロの使う道具はどうしても発注品になるらしい。
「はい。こちらになりますね。」
「ありがとうございます。」
手紙は出す方がお金を払うので、受け取る方は差出人や自分の一族や名前に間違いがないか確認するだけだ。
シェリスさんの記載と間違いがないことを確かめて、手紙を渡す。
手紙を受け取ったシェリスさんは明るい魔素で帰って行った。
今度こそ、いいものが手に入るといいな。
シェリスさんの料理は美味しいから、新しい道具で作られたものもきっと美味しいだろう。
また食べに行きたいなあ。
特別営業期間からこっち、いろいろあって暇がなくて食べにいけてないからなあ。
まだ蜜月だからクルビスさん置いて、私が休みの日に勝手に行くわけにいかないし、次にふたりでお休みの日はドラゴンの妊婦さんに会う予定だし。
あ。一般用の料理教室の話も進めなきゃ。
やること結構あるなあ。OLの時より今の方が忙しいかも。