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一文字下げたりするのは、後日手直しします。
お茶も揃って、ドライフルーツをいただくと、酸味のある味とお砂糖の甘さでさっぱりと食べられるものだった。
ドライフルーツを食べながら、異世界の事情に不案内な私にキャサリンさんがドライフルーツが一般的になった経緯を教えてくれた。
これはクルビスさんには教わらなかったなあ。
ドライフルーツのことも、夏場は果物が傷むから生ではあまり食べないってことを教えてもらったついでの知識だったし。
甘い果物の代わりにドライフルーツが一般的になるまでは色々あったみたい。
魔素をなるべく効率的に補給したいこの世界で、干すなんて珍しいなって思ってたんだけど、そもそも広めたのはエルフ達だったそうだ。
それまで、青いままで食べられるものはともかく、熟さなければ食べられない果物は、収穫してもすぐに食べられなくなるから夏の前に大量に収穫してお酒にするのが一般的だった。
でも、甘いものに目がないエルフ達は夏場も甘いものを食べたいとドライフルーツにする方法を選んだそうだ。
エルフ達の場合、元いた世界がルシェモモより寒かったから、保存食を作るのは当たり前だったらしく、これはわりとすぐ出来たのだとか。
その過程で虫除けの術式も開発されて、いまでは街の建物の至る所に使用されているそうだ。
「深緑の森の一族の皆さんは研究熱心ですからぁ。そりゃあ、魔素を使いすぎない、無駄のない式を作られたんですぅ。それまでは虫の嫌う草の汁を窓や入口に塗りつけて、それを長持ちさせる術式を掘ってたんですけどぉ、匂いがすごかったらしいんですよねぇ。だから、この術式を開発したことは今でもすごく尊敬されてるんですよぉ。」
へえ。知らなかったなあ。
森に近い場所はともかく、街中は土が無いから虫を見ないのかなって思ってたけど、術式を使って虫除けしてたんだ。
まあ、干してる間に虫がついたら嫌だもんね。
もしかしたら、虫除けの汁の匂いが嫌だったのかもしれないけど。
それで、そうやって出来たドライフルーツは、魔素が飛んだ食べ物として最初は敬遠されたらしい。
でも、エルフの皆さんが茶菓子として提供するうちに、素朴な甘みが好評になって、魔素が少ないから小さな子供でも食べられると夏のお茶請けの定番になったとか。
そこから、もっと甘いものが食べたいと、メルバさんがお砂糖の開発に乗り出すことになったって話には笑ってしまったけど。
そうやって、メルバさんが念願のお砂糖を開発してからは、さらに甘くしようと砂糖漬けになったそうだ。
だから、ドライフルーツには干しただけのやつと砂糖漬けと2種類あることになる。
これは好みがわかれるみたいだけど、転移局の術士は魔素の消耗が激しいので砂糖のお菓子は歓迎されるから、差し入れにもよく選ばれるのだとか。
「魔素が飛ぶのを気にせずに好きな時に食べられるから、隊士さんの補給食にもなってるそうですよぉ。お砂糖はべた付くことがあるから、干しただけのものが多いみたいですけどぉ。」
さすが八百屋さんのお嬢さん。
良く知ってるなあ。
私が感心して聞いていると、デリアさんも「そうだったんですか。」と興味深そうに聞いていた。
あ。デリアさんもカイザーさんも荷物の片付けや仕分け終わったみたい。そろそろ交代かな。