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犯人が捕まった星祭から2日後、私は職場に復帰した。
警護はついたままだけど、犯人が捕まったということで、前とあまり変わりなく働けてる。
あの箱が持ち込まれたことは、私へ料理教室の参加を執拗に迫って捕まったということになっている。
箱の魔素は街の人に目撃されてしまってるので、賄賂替わりの高価な魔具が興奮した相手の魔素に反応して暴走しかけたことになっていて、戻った私に街の人は労わりの声をかけてくれた。
キャサリンさんのご実家が上手く話を流してくれたのか、詳しいことは聞かれなかったけど、これでもう何度目かわからないくらいお世話になってるので、今回はキャサリンさん経由で水菓子を差し入れさせてもらった。
事前にカイザーさんに相談したら賛成してくれて、材料費は転移局持ちで転移局からのお詫びとお礼になっている。
とても喜んでもらえたようで、これからも何かあったら協力すると言ってもらえた。
ちなみに、お手伝いの隊士さん達がいなくなったのには、ご近所の奥さんや娘さんが残念そうだった。
「カッコイイ隊士さんを目の保養に普段来ないお客さんも来てたんですよぉ。」とキャサリンさんに教えてもらった。気持ちはわかる。
「ハルカさ~ん。休憩にしましょ~。」
キャサリンさんの声で仕分け作業を中断する。
身体を伸ばすと、腰のあたりが凝り固まっていた。
「は~い。ん~。」
腰を伸ばして、セッティングされたミニテーブルに向かうと、テーブルの上には干した果物の砂糖漬けがならんでいた。
今日のおやつ担当はキャサリンさんだ。
ドライフルーツは夏の定番のおやつなのだそう。
砂糖漬けタイプなのは元々はエルフのおやつだったけど、最近の砂糖菓子ブームでキャサリンさんのご実家でも扱うようになったそうだ。
キャサリンさんのご実家って八百屋さんなのに、ドライフルーツ?って最初は不思議だったけどね。
これは果物も野菜のひとつって異世界の感覚と、日本に比べてかなり暑い夏の気候のせい。
雨季が終わって暑くなると、果物の傷みはかなりひどくなる。
新鮮な魔素を補給するのが目的なのに、青い野菜替わりに使うものはともかく、甘い熟した果物はすぐダメになって売り物にならなくなるそうだ。
一応、冷蔵保存して売るお店もあるけど、甘い果物は数も少ない上に冷蔵の費用も加算されて、倍以上の価格になってしまうのだとか。
スーパーみたいに涼しい店内で売るわけにはいかないもんね。