27(クルビス視点)
きりの問題で、今回は1800字程あります。
そんなやり取りをしてると、キーファが一歩前に出る。
その途端、音を遮断する魔素に包まれた。
「3隊長にご報告いたします。各地域で1つずつ順番に調書を取る事と特別製の記録玉を使用するという案は、各地区の了承を得られました。現在の所、送る順番は北に一任するというお返事まで貰っております。こちらからは、詐欺師相手ですので、魔素の影響を受けにくい者を選抜して欲しいとお願いしてあります。」
もうそこまで話がすすんだのか。
俺もそうだが、キィもリードも驚いている。
朝の連絡の時もそうだったが、これも今までにない動きだ。
普段なら、連絡を取って協力するかどうか決めるだけでも数日はかかるというのに。
今回のことでは各地区がとても協力的だが、こんなに早く話がまとまるとは。
ビドーがいろいろ動いていたようだから、もしかしたら、各地区で住民の嘆願でもあったのかもしれない。今度聞いてみるか。
さらに続いた報告では、南地区からは、例の箱を作った技術者が作ったと思われる作品が港でも発見されたそうで、技術者の調書を先に取りたいとの要望が来たということだった。
「そうか。それなら、南へは技術者を送ろうか。どう思う?キィ、リード。」
「いいと思うぜ。それなら後は残りの2つを2つの地区に分ければいいし、決めやすい。」
「そうですね。キーファはどう振り分けると良いと思いますか?考えがあるように見えます。」
俺たちが南の要望に許可を出すと、キーファの表情がホッと緩む。
それもリードの質問が来ると、すぐさま引き締まった。
「私の考えとしましては、最初は赤の男を西に、青の男を東に送り、南は要望通りに箱を作った技術者の男を送ると良いかと考えています。報告を聞いた限りは、赤の男は西での活動が多かったようですので、あの箱を作った工房の関係者に関する話を聞き出せるかもしれません。上手くいけば調査が進むでしょう。」
根拠のあるはっきりした答えだ。
これなら、キーファの言う順番で問題ないだろう。キィ達もそれに頷き、キーファに後の手続きを任せることにする。
そして、キーファが話を終えると、リリィが前に出た。リリィも報告があると言ってたな。
てっきりリードに報告があるのだろうと思ったが、彼女は俺を真っ直ぐ見てきた。
「私のは報告というよりお願いに参りました。クルビス隊長、ハルカ様を迎えに行って下さい。その、隊長の魔素にあてられた調理師や隊士が幾つか医務局に運ばれています。」
どうやら、俺の漏れ出た魔素への対応に追われていたらしい。
抑えていたつもりだが、隊士たちに影響していたようだ。しまったな。
リリィの様子だと、病室にいる患者には影響は出ていないようだな。
だが、いくら病室が周りの魔素の影響を受けないよう作られているといっても、それでも限度というものがある。
ハルカと離れれば離れる程、自分の理性が危うくなってる自覚はあるからな。
このままだと、被害は拡大する一方だろう。
それで、今の嘆願になるわけだ。シードが交代に来たのはそれもあってだな。
思った以上に周りに迷惑をかけてしまったようだ。
「…すまない。迷惑をかけた。隊士たちの様子はどうなってる?」
「いいえ。皆、魔素の調整をしたらすぐに元気になりました。もう通常の勤務に戻っています。それより、皆、クルビス隊長のことを心配しています。無理をされてるんじゃないかと。」
俺の質問にリリィが俺を案じる声があると答える。
元気になったなら良かったが、部下にそんな心配をかけていたのか。
その答えにキィが吹き出し、リードは苦笑し、キーファは何もない風を装っていたが魔素がおかしそうに揺れていた。
「もう、いいんじゃねえか?さっきのでしゃべってくれそうな感じになったし、後はシードとリードがいてくれればなんとかなるさ。」
キィは迎えにいけと楽しそうに笑う。
まあ、そうだな。さっきので少しは自分のしでかしたことをわかったようだし。
「ええ。お疲れさまです。クルビス。」
今日はもう勤務を終わってもいいですよとリードも笑う。
その笑顔が明日からこき使うからと言っているようだが、まあいいか。
キーファとリリィも笑って頷いている。
甘えさせてもらってもいいだろうか。
「ま、そういうことなんで、後は俺たちでどうにかしますから、行って下さい。隊長。」
最後に、ニヤニヤと笑うシードに後押しされて、ハルカを迎えに行くことにする。
敵わないな。ありがたく行かせてもらおう。