24(クルビス視点)
ゼフさんにお礼を言って帰ってもらって、念のために工房の方でも裏を取る。
間違いなく、同じ箱だと言われ、証言書にもサインをもらう。
技術者たちは、自分たちで作ったものが犯罪に使われたことにとても怒っていて、進んで協力してくれるようだ。
そして、劇場の箱を盗んだ容疑として、まず調書を取ることになった。
「さて、この箱見覚えあるだろ?」
「さあ。箱なんてどこにでもあるものですから。」
主犯の男は顔の塗料は取られて、元の灰色の体色に戻っていた。
だが、面の皮の厚いことに、捕まったのは不当な拘束だと訴え続けているらしい。
相手は詐欺師。
これまで守備隊の追跡を逃れ続けていた男だ。油断はできない。
だから、確固たる証拠のある箱の話から追及する。
言い逃れさせないのが、一番追い込める方法だ。
「この箱なあ。変わってて、印がねえんだよ。」
今回の調書もキィが主体でいく。
リードは筆記、俺は見張りだ。
3隊長直々の調書なんて前代未聞だが、4地区にわたる詐欺こそ前代未聞だ。
これ程の詐欺師に魔素の半端なものはつかせられないからな。
口が上手いだけでは、ここまで逃げおおせた理由としては弱い。
交渉の上手い者は、自分の魔素を相手に合せ、そこから自分の波動に合わせるようにして魔素ごと話に引き込むといった方法を取る。
恐らく、この男もそれが得意なんだろう。
さっきから、大人しく従順な魔素を出し続けている。
ここまで大人しいと主張されると、かえって怪しいがな。
キィにはそんなもの効かないだろうが、万一があるから、俺が見張りについた。
経験豊富な単色の者も幾つかいるが、少しでも心に変化があれば退室してよいと許可している。
根競べだな。のらりくらりと躱す相手をどう捕まえるか。
もう少しすれば、回復したシードと交代出来る。
そうすれば、一度ハルカを迎えに行くつもりだ。
もう昼を過ぎた。
きっと女たちが星屑を作って、ドラゴン2つが食べ終わっているだろう。
父と祖父がいて、伴侶の作ったものを残すなんて考えられない。
子供の頃は祭りの時はよく食いっぱぐれたな。今なら多少は抵抗できるのに。
ああ。くそ。
こんなことがなければ、ハルカを膝に乗せて、ハルカの作った料理を食べられたのに。