23(クルビス視点)
大急ぎで本部に戻ると、シードが待ち構えていた。
どうやら魔素の補給も済んだようで元気そうだ。
「お疲れ。ずいぶん時間かかったんだな。」
「そっちこそお疲れ。時間がかかった分、いろいろ見つかったよ。協力者にも来ていただけたしな。劇場の技術者の方だ。」
そこで技術者のゼフさんを紹介する。
シードは知ってる顔だったらしく、「お久しぶりです。」と挨拶をしていた。
「事情はキーファから聞いてるよ。あの箱は用意してるぜ。会議室だ。」
シードの話に思わず振り返ると、少し笑うキーファと目が合う。
いつ連絡したんだろうな。キーファの仕事は相変わらず早い。
「んじゃあ。早速で悪いがゼフさん。見てもらいたいもんがあるんだ。ついて来てくれ。」
「はい。」
キィの言葉で移動を開始する。
会議室には例の箱と術士部隊の隊士が数名待機していた。
「これがその見て欲しいもんだ。」
「これは、魔道具、ですかな?」
例の箱に近づいたゼフさんが眉をひそめる。
魔道具は魔技師の管轄で、一般の技術者にとっては道具として使うことはあっても、中身を見たりすることなど無い物だ。
「ああ。効果はもう切れてんだけどな。勝手に作ったやつらしくて、出所探ってるんだよ。なのに、箱に印が無くってなあ。」
驚くゼフさんにキィが事情を説明する。
まあ、本当のことは言えないので、無許可で作ったことにしたようだ。
「はあ。こんなもんにまで手え出してたんですねえ。持ってみても?」
「ああ。大丈夫だよ。もうただの箱だから。」
呆れたようにつぶやいて、キィの許可を取ったゼフさんは箱を仔細に調べ始める。
そして、劇場から持って来た箱も調べ、さらに例の箱を何度か箱をひっくり返して、納得したように頷くと元の位置に置いた。
「たしかに、うちで発注したものと同じ工房で作られています。これはビッケの工房で作られた箱です。印がない発注などそうあるものではありません。私が最近耳にしたのは、うちの劇場で発注したものだけですので…。」
その先は聞かなくてもわかった。
例の箱は劇場から持ち出されたものだったということだ。
これでやつらと箱を繋ぐ証拠と証人がそろったな。
後は術式をどこで手に入れたのか、それを聞きださなければ。