19(クルビス視点)
もう1つの青の男に聞いても、同じような答えが返ってきた。
ただし、こちらはカイザー局長についての話が多かった。
「あいつ、いっつも俺らの邪魔しやがる。おせっかいで、おかしいと思ったらすぐ隊士にちくる。それでつぶれたもうけがどれだけあったか。どうせ、あそこにいる奴らにまともに仕事なんかこないんだ。言い付けたって同じようなことがまた起きるってのに。」
何を勝手な。詐欺師に言われたくはないセリフだ。
カイザー局長はいつも通りに北西の地域の住民を助けようとしただけだ。
こいつらだけじゃない。
北西の地域の住民は、その体色の薄さゆえにあらゆる面で不遇される。
だから、カイザー局長は住民と話をし、情報をあつめ、自分の目で確かめることを怠らない。
犯罪が発覚してからでは遅いのだと、昔の苦い記憶が彼をそうさせるのだろう。
ばかばかしいことだが、一昔前は北西の地域で犯罪が起こっても、隊士の耳に入るどころか途中で無かったことにされることもあったらしい。
父が現状に憂いて隊士と住民との交流を活発化させて、今の関係になるのにとても長い時間がかかったと聞いている。
同じ種族の中でこれ程色で区別し、差別しようとする街はルシェモモくらいだ。
ハルカには教えてないことだが、色が違い過ぎれば、親兄弟であっても縁を切ることがある。
これも技術者の街だから出た弊害だろうか。
普通に物を作る技術と生まれつきの魔素は関係ないのだが、陽球などの魔素で作る特殊技術が存在するために、ルシェモモではどうしても魔素の強い体色の濃いものが尊ばれる。
特別な魔素を使う陽球のような名産品に、体色の濃い名工たち。
街の発展を支えた物が技術者の基準となるのは仕方ないことだ。
だが、かつて、体色の合う者としか婚姻どころか付き合うことも出来なかったように、今も色が淡いというだけであらゆる可能性が閉ざされている。
祖父はこの現状を嘆き、一通りの基礎技術を学べるようにと中等学校を作り、子供たちを集めた。
それでも、まだまだだと思うことが何度もある。
その街の歪みをついたのが目の前にいる詐欺師たちだ。
「あいつが邪魔しなきゃ、もっと早く金が揃ってここを出れたんだ。そうすりゃ、こんなことにならなかった。」
こいつは件の紫の女性のことは知らないんだな。
3つで組んでいたようだが、絆が深いというわけではないのかもしれない。
「失礼します。クルビス隊長。」
外から小声で声がかけられる。
そっと牢から出ると、隊士に耳打ちされる。
「シード隊長が、最後の1つを捕まえたそうです。」
時間の問題だろうと思ったが、ようやくか。
部下のもたらした朗報に俺は笑った。