18(クルビス視点)
「紫?あの転移局に紫の体色なんていないだろ?」
「ああ。でも、客としてくるはずだからって。」
客?
客なら毎日来るだろうから、その中にいるのかもしれない。
恐らく、飲食関係の職についているものだろう。
そうでなければ、いつ来るかもわからないのにあの箱を送りつけることなど思い付かない。
「ん~。お客かあ。北西の地域なら、屋台のねーちゃんとかか?」
キィも同じように考えたのか、考える風に質問を重ねる。
日頃出歩いているから、見知った店主を思い浮かべているだろう。
「さあ。でも、店に戻る頃にはとか言ってたから、屋台じゃないと思う。」
店か。なら、転移局に記録は必ずあるだろう。
屋台だと、日によって材料が少ない場合、店主が市で材料を買っても、そのまま持って返ってくることもあるからな。
この後にでもカイザー局長に聞いてみよう。
彼なら、紫の体色の店で働く女性と言えば、候補が出てくるはずだ。
「なんで、その女性を狙ってるんだ?」
「さあ。俺らと手え組む前のことみたいで、詳しくは知らない。南にいた時に顔見知りになったって言ってたけど、すげえ気にしてた。」
南?南出身で紫の女性…。
1つだけ心当たりがあるな。
俺とハルカの式の夜に差し入れしてくれた淡い紫の女性。
ハルカは名乗ったと言っていたな。
軽食を中心に料理を出す店を1つで経営している。
ハルカはそこの料理が気にいったみたいで、俺たち2つで食べに行こうと約束してた。
そして、壊れた調理器具を売りつけられそうになってたその彼女をハルカが助けたんだ。
転移局とはかなり関わりがあるな。可能性が高そうだ。
しかし、紫か。嫌な予感がする。
俺の夢では、ハルカの近くに紫の体色をした者がいた。
ハルカは何も言わなかったが、もし、その夢に出てくるのが例の女性だとしたら。
もしや、ハルカは巻き込まれて襲われるのでは?
だめだ。わかり易い可能性に飛びついてはいけない。
その女性のことを俺は良く知らないから、ここで判断は下せないはずだ。
ハルカを守るためだ。
冷静に慎重に。確実なことだけを見なくては。
「ふうん。知り合いかあ。美人なのか?」
「そうみたい。聞くと怒られるから、あんまり聞いてないけど。」
俺が思考にふけっている間に、聞き上手のキィが話を続けていた。
何でもない会話からスルスルと相手の情報を吐き出させるのがキィのやり方だ。
青の一族の長の長子として必要にかられて身につけたとはいえ、現在かなり役に立っていると前に笑って話していた。
それにしても、えらく簡単にしゃべるな。
主犯格の男に見捨てられたと思ってるのが影響が大きそうだ。魔素も揺れっ放しだしな。
となると、やはり、バラバラにして、一切のやり取りは出来ないようにしておいた方がいいだろうな。
もし、「置いて行ったのではなく、逃げる算段を整えに行ったら守備隊の襲撃にあった」などと言われてしまえば、何も答えなくなるだろう。
各地区への移動で顔を会わせても困るから、それもこちらで決めておかないとな。