17(クルビス視点)
その後、キィと俺は捕まえた主犯のうち2つに会いにいった。
正式な調書というわけではないが、記録は取る。聞くことは1つだ。
「北西の地域の転移局への箱は誰を狙ったものだ?」
俺の質問に赤の男はビクつく。
箱を作ったやつは、局長のカイザーさんを狙ったように言っていたが、実際はどうだったか確認しなければならない。
ハルカは自分でわかっているより、多くの者にとって特別な存在だ。
未知のレシピを示し、レシピの共有という前代未聞の試みを行い、汁粉などの砂糖を使った新しい魔素の補給の仕方を示した。
そして、俺の伴侶であり、ドラゴンの一族と深緑の森の一族の庇護を受け、それぞれの長が後見についている。
なのに、彼女自身に戦う力はないときた。
権力に群がる者や、欲にかられた者には生きた宝にでも見えるだろう。
彼女のことが広まってから、守備隊を探ろうとする輩がかなり増えた。
隊士たちが蹴散らしてくれてるが、それでも表から裏から繋がりを持とうと切りがない。
最初の頃なんて、ハルカをさらおうとしたのか、大きな袋を持って忍び込もうとしたやつもいたくらいだ。
今回のことが無関係だとは言い切れなかった。
だが、もし、彼女の狙ったのだとすれば。
「ひぃっ。」
赤の男は震えたまま気を失った。
ち。これじゃ、話が聞けんだろう。
「あ~。俺が聞くから、クルビス、な?ちょおっと魔素を抑えようぜ。俺でもきついわ。」
魔素が?いかん。ハルカを狙ったものかと思うと、腹立たしくて魔素の抑えが利かないようだ。
これはキィでもきついだろう。
まずいな。ハルカのことになると自制が利かなくなる。
後はキィに任せるか。情報さえ取れればいいのだし。
「すまない。俺は少し離れている。キィ、頼めるか?」
「おお。まかせとけ。ほら。起きろよ。」
「う。…ひいいいい。」
やり過ぎたか。キィがため息をついて精神安定の術をかける。
赤の男は俺が何歩か下がってなるべく距離を空けると、ようやく正気になったようだった。
「う。あ。」
「ああ。大丈夫。話は俺が聞くから。な?知ってることだけ教えてくれればいいんだよ。転移局の誰にあの箱を送ろうとしたのか知りたいだけなんだ。」
キィが宥めるように問いかけると、赤の男は少し困ったように考え込み、それから口を開いた。
その口からもれたのは「黄色い男。」という言葉だった。だが、後に続いた言葉が問題だった。
「女も巻き込めって。紫の女。」
紫の女?
誰のことだ?