15(クルビス視点)
「まあ、そう悩むな。相手は複数いるのだろう?なら、すべて捕まえてしまったら、バラバラに各地区で調書を取れば良い。何、箱を作った技術者なら西も関係するし、逃亡中のやつと組んでいた2つなら南と東に1つずつ調書を取ってもらってるうちに、北は本命の詐欺師の調書を取れば良い。」
悩む俺に祖父はさらりと解決策をくれる。
そうだ。相手は複数。なら、バラバラにしてしまえば。
「その後、他に関係する地区に移動させていけば、そう不満も出ぬだろう。何もただ待たされるわけではないのだから、どの地区を優先したことにもなるまい。」
そうだな。
今の状況ならそう悪いように解釈されることもないだろう。
ちゃんと調書を取れるのだから、捜査が滞ることもないだろうし。
それでもあえて突っ込まれたら、そうだな。
「では、話を合わさせぬために各地区で調書を取ることにしましょう。詐欺師相手ですから。」
「そうだな。それなら、納得するだろう。」
俺の思いついた建前に、祖父も賛成する。
まあ、建前と言っても実際の話、口裏を合わされると困るので、知能犯は話が出来ない用に隔離することになっているから不審に思われないだろう。
今回はそれが4地区にまたがったから、隔離も地区ごとにしただけだ。
前例のない事態に頭を抱えていたが、祖父のおかげで助かった。
「ありがとうございます。」
「何。どの一族も争うことなく済むようにするのが我の務めよ。これも同じこと。」
祖父はドラゴンの長として、日々、他の一族のバランスを取っているからな。
俺からすれば終わりのない面倒ごとだが、いずれ、俺もトカゲの一族の家長になれば同じようなことに苦慮するのが日常になるのだろう。
「ああ、そうだ。劇場の支配人に正式な謝罪は必要ないと言われました。」
「公にしないためか。それでもウワサは付きまとうだろうに。」
「ええ。しかし、今回の件が広まれば、つぶれる可能性も高くなりますので。」
「住民の嘆願で残した物をそうやすやすと壊しはしないが、ふむ、いいだろう。今回は公にしないということだな?」
「はい。」
「わかった。今回の事件に関して、劇場のことはお前に任せる。良いようにしてやってくれ。」
「はい。」
祖父はこういう時に話が早くて助かる。
許可も出たし、あの劇場に関しては俺の裁量でかなり自由にさせてもらえることになった。
仕事が増えたが、支配人にも覚悟があるようだったし、無くなるより有効活用された方がいいだろう。
さて、キィの所に連絡取るか。