13(クルビス視点)
俺たちが連絡を取ってる間に劇場の片付けは終わったらしく、部下が報告に来た。
支配人とは話がついてるが、それ以外の技術者や俳優たちは不安がっていたようだ。
「まあ、仕方ないだろうな。前の捕り物を知る者もいるだろう。」
「はい。劇場がつぶれるという話まで出ていて、このままだと混乱が広がりそうです。」
十分、有り得る話だからな。
自分の職場が無くなるとなったら平静ではいられないだろう。
しかし、このまま不確かな情報が外に漏れるのは困る。
つぶれるかどうかだって可能性の1つだし、何より支配人は公にすることを拒んだ。
それは劇場の存続のために耐えてみせると言う彼の覚悟でもある。
住民の嘆願あって残した劇場だ。残れるなら残って欲しい。
それに、今回捕まえたやつらは4つの地区全てで追っていた。
その連中が劇場に紛れ込んだのは北の守備隊の落ち度とも言える。
だから、今回の件のウワサを放置したまま中央本隊の耳に入ったらやっかいなことになるだろう。
以前のように、キィやリードを中央に寄越せと難癖つけられそうだ。
何とか内輪で納めさせないと。
しかし、話すなと言っても聞かないだろうな。それなら。
「そうか。なら、そうだな、劇場関係者にはこのまま内部で話がまとまるなら、存続の可能性が高いようだとウワサを流してくれ。」
「よろしいのですか?」
俺の発言に驚いたようにキーファが聞き返す。
まあ、決まってもいないことを隊士が言うのは褒められたものではないからな。
「住民の嘆願で残った劇場だ。俺の意見になるが、大きなウワサにならなければ、すぐにつぶれることは無いだろうと思っている。だが、確かなことでもないからな、それとなくウワサを流す方がいいだろう。」
「そうですね。それなら、私も行きましょう。裏方の技術者に知り合いがいましたから、それとなく話を誘導してみます。」
劇場の技術者と知り合いなのか。
キィだけでなくキーファも交友関係が広く、たまにあっと驚かされる。
休みの日にはキーファも外に出てるみたいだが、それがキィの行動とよく似てるのを自覚してなさそうだな。
キーファがキィに引き取られてからもう50年以上か。
年々似て来てるな。あの2つ。
キーファに言うと怒るから言わないが。
「頼む。俺が言うと返って大騒ぎになるしな。」
「了解しました。」
俺の意見を聞くと、キーファと部下はすぐさま劇場に戻っていく。
今回はこの方が上手くいくだろう。
不安になっている時に話すなと言っても無駄なことだ。
後は、祖父と父への報告だ。面倒だな。