8(クルビス視点)
しばらくして、顔色を悪くした支配人とキーファとアニスがやってくる。
キーファは黄緑に黒の模様の服、アニスは青緑のドレスだ。
急ぎでお互いの色を着てくるくらい仲が良いのに、どうしてまだ付き合ってないんだ。
北の守備隊の不思議の1つだな。
支配人は染めと模様が様々に入った良い服を着ている。黒いサンダルも革製の艶のあるものだ。
俺たちが目礼すると、礼を返してくれる。
顔色は悪いが目には力がある。
劇場の立て直しに選ばれただけはあるな。
「北の守備隊戦士部隊隊長のクルビスです。本日は急なことで申し訳ありませんでした。」
まず、俺が名乗り突然の捕り物を詫びるとその場にいた隊士が一斉に礼を取る。
支配人はそのことに驚いたようだったが、取り乱した様子もなく静かに礼を返してくれた。
「同じく北の守備隊術士部隊隊長キィランリースです。詐欺師の一味を捕らえました。詳しいことをお話したいので、どこか場所はありますか?」
「当劇場の支配人をしております、ベリシーと申します。隣の部屋が応接室となっておりますので、まずはそちらに。」
詐欺師と聞いてまた驚きに目を見開きながらも、隣の部屋への案内をしてくれる。
詐欺師が誰かを聞いたらもっと驚くだろうな。
移動する前にキーファが表に騒ぎを出さないように口止めは終えていると報告してくれた。
これで話に集中することが出来る。
キーファがいるから後は任せて大丈夫だろう。
シードのことを説明して、後の連絡と突入の時のけが人や現場の対応をキーファとアニスにまかせて、俺とキィは応接室に向かう。
応接室と言うだけあって、木製のテーブルとイスが並ぶ部屋は簡素だが立派なものだった。
後援者をもてなす時に使うんだろう。
「まずはお茶を。」
支配人が壁際のティーセットに向かっていく。
慣れた手つきを見て、気持ちの上でもその方が落ち着くだろうと任せることにする。
茶の支度が整うと先に香り高い茶を口にする。
香りの良い茶は心を落ち着かせる作用があるので、こういう関係者に事情を聞いたり説明する時には守備隊でも振る舞うことになっている。
ふわりと花の香りが漂う。美味い。
香りもいいし。ハルカが好きそうな茶だ。
横目で見ると、キィも目を細めて茶を飲んで頷いている。
あの様子だと茶の名前を知ってそうだな。後で聞いてみるか。