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「さ~て。じゃあ、残りをちゃっちゃと片して、お茶にしましょう~!」
キャサリンさんが元気一杯に提案してくれる。
カイザーさんも嬉しそうに「そうですね。」と頷いていた。
よし。じゃあ、私もお手伝いしよう。
説明前だから、荷物を転移陣まで運ぶくらいしか出来ないけど、それでも何か役に立つだろう。
「じゃあ、俺はこれで。夕方には迎えに来る。」
仕事に戻る流れになったところでクルビスさんが声をかけてくれる。
実は、私ひとりじゃ心配だって、送ってくれたんだよね。
雨季の間に蜜月は一応終わったみたいなんだけど、それでも極力伴侶から離れるのは嫌みたいだ。
どうやらフィルドさんやルシェリードさんもそうらしく、シードさんには「あきらめろ。」と諭された。
だから、これから毎日、クルビスさんが朝と夕方に送り迎えしてくれるんだよね。
いいのかなあ。未だに納得できてないんだけど。
ただ、式の前に襲われた話は街でも結構ウワサになってるらしく、送り迎えの話をすると、カイザーさんにもキャサリンさんにも賛成されたんだよね。
この辺りは下町で、柄の悪いのもいるからその方が良いって、送り迎えは続けるよう説得されてしまった。
「でないと、もし絡まれでもしたら、その連中がクルビス隊長にぼっこぼこにされちゃいますよ~?」
「ハルカさんの、ひいては街の安全のためにもその方がよろしいかと…。」
あ。そういう認識なんだ。
まあ、あながち間違ってない想像なのが恐ろしいんだけど。
蜜月の時の様子を見ちゃってるからなあ。
否定できないなあ。
ここはありがたく送り迎えしてもらおうかな。
私が頷くと、おふたりともホッとしたようだった。
「じゃあ、転移陣の説明からしますね~。こちらへどうぞ~。あ、そこ気を付けて下さいね~。」
そう言って、キャサリンさんが奥に向かって荷物の間をすり抜ける。
さあ、お仕事だ。でもこれ、奥に行くのも気をつけないと下敷きになりそう。そ~と、そ~と。
「は~い。ここが我が転移局の転移陣です~。小さいけど、物流が多いので2つもあるんですよ~。」
案内された部屋は小さい部屋が2つ並んでいて、それぞれ1つずつ転移陣が描かれていた。
どうやら床に敷いた石に直接刻んであるようだ。
「ちょっと古いんですけど、まだまだ現役の式です~。深緑の森の一族の長様が描いて下さって、街でも指おりの安定性を誇る式なんですよ~。」
え。この転移陣、メルバさんが刻んだの?
そういえば、転移陣の開発者にはメルバさんも入ってるんだっけ。
でも、まさか式を刻むまでやってるなんて思わなかった。
式の時のベールの刺繍といい、本当に何でも出来るひとだなあ。