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それから梅酒の話に戻って、甘い梅酒は秋以降に漬け始めると伝えると、メラさんは目を輝かせていた。
それはイシュリナさんもで、やっぱり女性たちは甘いお酒が好きなようだ。
「さっぱりと辛口もいいんだが、酒だけで楽しむなら甘いのもいいな。」
ああ。たしかに。
こっちのお酒って料理と一緒に飲むものだから、辛口や酸味のあるさっぱり系が多いもんね。
もちろん、お酒だけで楽しめる香りのいいものもあるんだけど、甘いお酒はまた別の楽しみがあると思う。
氷砂糖があるのに不思議で、この際だからと聞いてみる。
「氷砂糖があって良かったです。でも、お酒には使ってなかったんですね。」
「ああ。あれは守備隊の携帯食糧として開発されたんだ。作るのに手間はかかるが、魔素が長持ちするから。」
携帯食だったのか。なるほど。
これも氷砂糖の使い方だよね。
「まさかお酒に使えるなんて思わなかったわ。」
「果実酒があるので、あるんだと思ってました。」
だから、梅酒作ろうって思ったんだよね。
でも、ドラゴンの果実酒はワインとかに近い、発酵させるお酒が大半だった。
「砂糖はこれまで無かったからな。果実だけで酒を造っていたんだ。」
「香辛料を加えるのも他の一族の飲み方だしね。」
ルシェリードさんの言葉にフィルドさんも頷く。
そういえば、香辛料を使ったワインもどきみたいなのもあるんだっけ。
身体を温める作用があって、身体が冷えた時に飲むものだそうだ。
主に休眠期に飲まれるものだから、私はまだ飲んだことないけど。
ドラゴンの皆さんは料理にしろお酒にしろあまり手を加えない方が好みらしく、イシュリナさんやメラさんの作る料理も和食に近い素材を生かしたものが多い。
嗅覚が鋭いからだろうな。
クルビスさんも味の濃いのは苦手みたいだし。
内心頷いてると、ルシェリードさんがポツリと付け足す。
「まあ、ほとんど里で飲みきってしまうから、外の知恵が入ることはなかったな。」
ああ。そうだろうなあ。
ドラゴンの宴会はすごかったから。
樽のフタを牛乳瓶のフタみたいにキュッポンと槍で外してたり、家1件分はある酒樽からがばがばすくって飲んでたし。
最後はお酒の雨が降る始末だ。あれじゃあ、どれだけお酒を造っても残らないだろう。
「本体で飲まれますもんね。」
「あれが一番酔えるしな。」
「楽しいですよね。里でしか出来ませんけど。」
私の相槌に怖い答えを返すルシェリードさんとフィルドさん。
うん。あの宴会は外では無理だと思う。