17
楽しい食事が終わると、お茶をしながら今度は例のドラゴンの調理師さんの話になった。
どうやら、私に会えるのをかなり楽しみにしてくれているらしい。
「ふさぎ込んでいたのが、とても元気になったのよ。」
「元気になり過ぎだろう。あれは。」
イシュリナさんとルシェリードさんが困ったような嬉しそうな顔をして話す。
メラさんも知ってるらしく、話題に乗ってきた。
「ははは。調理場に立ってるんだろう?ハルカさんに食べてもらいたいと大なべを振りながら言っていたな。」
妊婦さんが大なべを振るって、え、それはちょっと良くないんじゃ。
ルシェリードさん達が困った様子なのもそのせいなのかもしれない。
「大なべって、お腹は大丈夫なんでしょうか?」
「そうなのよねえ。せめて小なべにしなさいって言ってるのに、ちっとも聞かないのよ。」
いえ、イシュリナさん。そういうことではないと思います。
あれ。ルシェリードさんもメラさんも頷いてる。そういう問題なの?
「あの子はジッとしてるって出来ないから。」
「調理を取り上げたら、鍛錬しようとするしな。」
ああ。調理してる方がマシなんですね。
どうやら、私に会いたがってる調理師さんはかなり活動的な方みたいだ。
「そういえば、フィルドさん遅いですね。」
お茶の前に「すぐ戻ります。」と言って、出て行ったきりだ。
お仕事は終わらせてきたそうだけど、呼び出されたのかな?
「ああ。もう戻ってくるだろう。ほら。」
メラさんの指す方を見ると、フィルドさんとアーネストさんが連れだって来た。
アーネストさんはヘビの一族の族長で、シードさんのお父様だ。
おふたりとも何故かデッカイ壺を抱えている。
お酒かな?ドラゴンは何かにつけて飲むらしいから。
「おお。フィルリエ。わざわざ持ってきてくれたのか。」
「お久しぶりです。ルシェリード様。俺じゃなきゃ、こんなにいい匂い嗅ぎながら持ってこれませんよ。」
ルシェリードさんに苦笑しながら、アーネストさんが挨拶をする。
やっぱりお酒だったみたいだ。水瓶と言ってもいいくらいの大きさなんだけど、全部飲むんだろうなあ。
「ははは。さて、ハルカ。おいで。今度はこっちだ。」
んん?こっちとは?
あ。星祭か。さっきがイシュリナさんの料理で、今度はドラゴンってことね。
やっぱりお酒なんだなあ。
ドラゴンらしい。