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追加されたおかげで、ようやく他の種類も食べることが出来た。
あっという間に無くなるのはわかってるので、先に各種取り皿に取っておく。
餃子もどき、もとい、星屑はどれもとても美味しかった。
白はピリッとした胡椒のような香辛料が効いていて、あっさりシンプルな魚の味を楽しめる。
水色は草もちっぽい香りの皮にシンプルな白身と相性が抜群だ。
ピンクは最初に柔らかな花の香りが鼻を抜け、次に魚のジューシーさと意外にすっぱかった赤い実ですっきりした後口だった。
ラベンダーは皮の方が少し酸っぱくて、料理に使うハーブのような独特の香りがするけど、香ばしいナッツ系の緑の実のおかげで食べ難いということはなかった。
黄色は意外に甘みのある生地で、酸味と香ばしい木の実でおかずっぽさを出してる気がする。
この黄色い生地の味ってまるで芋を混ぜ込んだみたいだ。
あ、そっか。これトラット豆だ。
「トラット豆?」
「まあ、そうよ。さすがだわ。故郷で野生種に近いものを育てていたの。それを長が改良なさって、今のトラットになったのよ。でも、まさか豆がお菓子に使えるなんて思いもしなかったわ。」
そういえば、こっちで豆って料理に使うものであって、お菓子に使うなんて思わなかったんだっけ。
甘く煮つけるって感覚がないみたいだったもんなあ。美味しいのに。
「お菓子だけじゃないですよ。故郷ではお菓子用の甘い味付けと、おかず用の甘い味付けがあるんです。」
「あら。おかずが甘いの?」
甘いおかずがあることを説明すると、ドラゴンのおふたりは驚いて目を見開いて固まったけど、イシュリナさんは興味を示したようだった。
「甘辛い、と言った方が近いですね。ショーユやミソを使うので。」
「これが最後だ。その甘辛いとは煮魚の味みたいなものなのだろうか?」
また新しい大なべを持ったメラさんが寄ってくる。
いつの間にか皿はまた空になっていた。
「ええ。似てますね。ただ、出汁をきかせれば、お砂糖とお塩だけでも美味しくできます。」
「ああ。お砂糖を使うのね。それならなんとなくわかるわ。」
深緑の森の一族に関わりの深いメラさんとイシュリナさんは理解してくれたようだ。
対して、ドラゴンのおふたりは想像しにくいのか考え込んでいる。
「甘い。…料理が?」
「煮魚は濃かったが美味かったな。あの味か。」
フィルドさんはどうやら料理で甘いものは得意ではないみたい。
ルシェリードさんはエルフと仲が良いからか、煮魚の味は知ってるようだった。
そういえば、クルビスさんもすき焼きの説明で甘辛い味がよくわからないみたいだったなあ。
煮魚をあまり知らないのかも。帰ったら聞いてみようか。