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そんなおしゃべりをしてるうちに大量の餃子もどきが出来上がった。
後はこれを茹でるだけ。
「ただいま。」
「ただいま帰りました。」
絶好のタイミングでルシェリードさんとフィルドさんが帰ってきた。
私の姿を見付けて、「ああ。今日だったか。」と嬉しそうに笑うルシェリードさんに、「ようこそ。今年は3つで作ったんだね。」とフィルドさん。
おふたりとも、事件のことも何も聞かない。
ただ、普通に家に遊びに来たのを迎えてくれただけみたいだ。
その気遣いがなんだか嬉しい。
ケガもなかったことだし、私としてももう終わったことであまり騒がれたくなかったから。
守備隊では隊士さん達にずいぶん心配されて、声をかけられたんだよね。
最初はいろいろ事情とかも話してたけど、何度も言われるうちに疲れてしまった。
北の守備隊は隊士さんの数多いから余計に。休みだから、声をかけられやすいし。
何より、気遣いからきてる行動だから、やめてほしいとも言えない。
贅沢なことだけど、それが最近の悩みだった。
もしかしたら、クルビスさんからそういう話も伝わってるのかもしれない。
私が特別な扱いや過剰な心配されるのをとても嫌がってたしね。
そんなさりげない優しさに感動しつつ、挨拶をして仕度を手伝うのに戻る。
お湯を沸かす大なべはルシェリードさんが用意してくれて、沸騰したらそこに餃子もどきを投入していく。
色とりどりの生地が水の中で踊ってきたら、ふきこぼれないように注意し生地がくっ付かないようにかきまぜながら湯がいていく。
「さ、できたわ、とりあえず食べましょうか。」
そういって、ルシェリードさんが持つ特大の大皿に、次々と餃子もどきを乗せていくイシュリナさん。
プルプルした生地が美味しそうで、今にもお腹がなりそうだ。
「これが星祭名物、星屑よ。かがやく生地を星に例えたのだけど、我が家のは丸くないから星に見えないのよねえ。」
「星屑」って名前の料理なんだ。
たしかに、水分を含んだ生地がつやつやで室内の光を反射してとてもキラキラして見える。
「私の母は不器用でね。丸く作れなかったの。だから、私の実家ではこの形なのよ。」
どうやら、本来なら丸い形にするはずが、餃子もどきに変化したのは、不器用なイシュリナさんのお母様のおかげらしい。
どちらかというと三日月が近い形だけど、これもそれぞれの家の味だよね。