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「次は中身ね。最初はこれをゆでるだけだったのだけど、豊かになってからは中身を入れるようになったの。主に魚と木の実だけどね。」
そういって、楽しそうにカラフルな魚をテキパキと捌いて叩いていくイシュリナさん。
荒地といっても川はあったらしく、昔は川魚を使っていたのだそうだ。
今調理している魚も川魚で、綺麗な川の上流にしかいない種類だそうだ。
キラキラした銀色みたいな1本のライン模様の入った綺麗な青い魚だ。
色だけ見ると熱帯魚みたいだけど、大きさは私の両手で収まるくらいで、結構大きい。
鮎よりは大きいかな。
川魚特有の臭みもないみたいだし、ますます鮎みたいだ。
叩かれてひき肉になった魚肉を5つにわけて、砕いた赤い実や緑の実を入れていく。
見た目は派手だけど、中身は白身らしくあっさり食べられそうな予感にホッとする。
最後は茹でるって話だったし、水餃子のイメージが近そうだ。
5色の皮に合わせて、5つの餡が完成する。
木の実を入れた餡が3つ、入れてない餡は何かの香辛料だけ入ってるやつと何も入ってないやつにわけられた。
白い皮には香辛料入りのやつ、水色は何も入ってないやつ、ピンクは赤い木の実で、黄色は赤と緑の木の実で、ラベンダーは緑の木の実入りのやつを包んでいく。
中身もちょっとずつ変えるなんて贅沢だけど、皮との相性があるんだろうな。
そして、どこの世界でも同じみたいで、単純作業になるとおしゃべりに花が咲く。
ルドさん達と作ってる時は、こっちの食材や料理の話ばっかりになるから、こういうのは久しぶりだ。
「そうそう。白が流行ってるって言ってたでしょ?今ねえ、白抜きのソメが流行ってるのよ!」
「へえ。白抜きかあ。染料が染み込みそうだけどなあ。」
「ええ。でも、この間のコンテストで、新しい技法を開発した工房があってね。そこのソメは綺麗に染める部分と染めない部分がくっきりわかれているそうよ。」
へえ。私が忙しさで忙殺されてる間にそんなことが。
北ではあんまりウワサになってないから、きっと別の地区の工房の話なんだろう。
中央はコンテストで優勝したり話題になったものがいち早く出回るそうだから、今聞いてる話は最新の話題だってことになる。
最近の流行は白をいかに取り入れるかに移ってきてるとか。
これも私とクルビスさんの式の影響かな。
ちょっと気恥ずかしいけど、これは常連さんと話すいいネタになるなあ。
こっちは昔ながらの地域密着型の営業をしてるから、常連さんとのおしゃべりは必須だ。
情報を得る手段がウワサによるものが大きいからっていうのもあると思う。
だから、転移局は色々な情報が集まりやすい。
キャサリンさんだけでなく、カイザーさんもデリアさんも聞けばいろいろ知ってるもんなあ。