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「わかりました。皆さんお話し下さってありがとうございます。本来ならこのままお帰りいただくのですが、皆さんにはこのまま話合いに参加して頂けたらと思っています。後での確認になって申し訳ありませんが、いかがでしょうか?キィ隊長?」
メルバさんの話の衝撃から立ち直ったフェラリーデさんが、今度はキィさんに話を聞く。
するとキィさんが少し驚いたように「ああ。そっか。いいぜ。」とつぶやく。
事情聴取だけだと思ったのに、いいのかな?
メルバさんとカイザーさんとキャサリンさんは頷いてるから、問題はないみたいだけど。
「クルビス隊長と話合っていたのですが、今回のことは目撃者が多く、憶測が飛び交っています。転移局の皆さんが食堂から帰る時でも、たくさんの方に話を聞かれたそうですし、このまま皆さんを返しても、情報を求める住民の皆さんが殺到するだけで、これからの転移局の業務にも差し障りがあるでしょう。」
そうなんだよねえ。
メルバさんや守備隊で生活する私はともかく、キャサリンさんとカイザーさんの所にはひとが殺到しそうだ。明日の仕事もどうなることやら。
「また、今回はすでに忘れられた術式の使用といい、特殊性のある事件ですから、下手なウワサは患者のためにもなりません。いきなりのお願いになって申し訳ないのですが、北西の転移局の皆さんには、きちんとした情報の伝達のお手伝いをしていただければありがたいと思っています。」
「そういうことなら、喜んで協力させて頂きます。」
フェラリーデさんの説明にカイザーさんも笑顔で頷く。
私ももちろん「私も。精一杯協力します。」と頷いて、キャサリンさんも何度も頷いていた。
「おまかせ下さい。そういうのは私の、さらにはうちの家族の得意分野ですぅ。ここに来る前にも、変な話が広がらないようにちゃんと釘刺しときましたから、今のところ、体調不良で倒れたことで話は収まってるはずですぅ。」
あ、これは守備隊に行く前にキャサリンさんが説明に行ってたやつだな。
ご実家にちゃんと説明するって、こういう根回しの意味もあったのかあ。これだけでもずいぶん助かる。
「ありがとうございます。とても助かります。」
「まったくだ。ありがたい。助かります。」
「ありがとうございます。ハルカもよろしく頼む。」
私たちの快諾に礼をするキィさん達。
テレビもニュースも無いここではこういう協力は大事なものなんだろうな。
ウワサは怖いものだから、情報の統制は必要なことだろう。
どうせ広がる話なら、カバズさんの不利にならない、捜査の邪魔にならないものであればいいと思う。