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「他の色もあると聞きましたが、魚人の里で作られてるんですよね?」
再度、メルバさんに恐縮と感謝をしつつも、海の輝石を作った魚人に関心が湧く。
渦は収まったらしいのだけど、クルビスさんのお仕事がごたついてるせいで、訪問の日時はまだ未定だ。
出来るなら、魚人の里に行く前にグレゴリーさんに今の白の輝石の現状も聞きたいけど、お忙しいだろうなあ。
甥のオルファさんも黄の一族の長としてのお仕事で忙しいだろうし。
う~ん。この辺はクルビスさんに相談してみよう。
簡単に会えるひと達じゃないんだし、他によく知ってるひとがいるかもしれない。
「そうねえ。たしか、4、5色はあったかしら?そうそう、アニエスがくれた宝飾品にいくつかあったはずだわ。ちょっと待っててね。」
さすがルシェリードさん、奥さんへのプレゼントに真珠ですか。
普通の真珠も高いらしいのに、いくつもって。
「白を抜いて4、5色、まあ、それくらいだな。私もフィルドからもらったのがいくつかあるが、深い青の輝石が人気らしい。」
深い青って、真珠なのに色が濃いんだ。
地球でも黒真珠ってあったけど、ああいう感じなのかな。
もしかしたら、淡いピンクとかあるのかもしれないけど、白は敬遠されてたみたいだし、街では出回ってないのかもしれない。
色んな真珠の話も魚人の里で聞けるかな。
「あったわ。」
イシュリナさんが持って来た綺麗な寄木細工の箱の中には、大粒の黒光りする深緑の真珠のネックレスに、真っ青なブレスレット、血の色より濃い赤の真珠が花のように並べられた日よけを止める金具などなど。
どれも粒が揃っていて、美しい光沢を放っていた。
「綺麗。」
「ふふふ。海の輝石はアニエスが一番最初にプレゼントしてくれたものなの。出会って100年の記念ごとに送ってくれるから、こんなにたくさん増えてしまったわ。」
呆れたように、でも嬉しそうに教えてくれるイシュリナさん。
100年ってスパンがすごいけど、こっちでは結婚10年って感覚なんだろうな。
それにしても、100年ごとに記念の贈り物してるんだ。
すごいなあ。これだけ奥さん大事にする旦那さんも珍しいよね。
あ。でも、メラさんもフィルドさんからもらってるみたいだし、ドラゴンでは普通なのかな?
もしかして、クルビスさんにとっても普通だったりして。どうしよう。
目の前の輝石たちは内側から光り輝いてるようで、濃い色でもとても綺麗だ。
一度、日本の母に南洋の海で取れた黒真珠の大粒玉を見せてもらったことがあるけど、あれに似てる。緑かがった黒でとても綺麗だった。
母はそれ以外にも、弔問用としてグレーっぽい黒真珠の1連も持ってて、「これはあこや貝なのよ~。」とか言って、自慢気に見せびらかされたっけ。
自分の黒真珠も欲しかったけど、どちらも私には使い道が少ない上に高価なので、結局、無難に白の小粒1粒のシルバーネックレスで乗り切ることにしたんだよね。
あの黒真珠たちに比べると、こっちの真珠は濃いめの色だけど、もっと鮮やかだ。
南洋系って感じだなあ。