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色々見せてもらったけど、私は群青の水玉のマグカップをペアで、メラさんは黄色の水玉のポットとペアカップをセットで買っていた。
黄色はフィルドさんの好きな色なのだそうだ。ご馳走様。
「ありがとうございました。」
お店のひとに見送られて、他にもあちこち覗き見ながら進んでいく。
日よけのおかげか、傍にいるメラさんのおかげか、外では特に声をかけられることもなく買い物を楽しめた。
「お。メラちゃんじゃねえか。イシュリナ様に頼まれてたの入ったって伝えておいてくれないか。いつでも届けるから。」
「ありがとう。昼前に持ってきてくれると助かる。しかし、それなら私が持っていこうか?」
「はは。ありがとよ。でもいいよ。今日はお連れさんもいるだろ?ほら。これ持ってきな。」
「ありがとう。」
八百屋さんなのか、色とりどりの野菜を売ってるお店の緑のヘビのおじさんは、真っ青な瓜みたいなものを二つ渡してくれる。
メラさんはそれを難なく片手で受け取り、お礼を言って立ち去った。
慌ててついていったけど、どうやらよく知ってるお店のひとみたいだ。
きっと子供のころからの付き合いなんだろうな。
「メラちゃん」なんて呼べるひとがルシェモモに何人いるか。
イシュリナさんからの注文があったみたいだけど、今日は何かあるのかな。
「ただいま。母さん。」
「あら。お帰りなさい。早いわね?」
「色々見て回ってきたんだけど、暑くなる前に切り上げたんだ。これ、グッジのおじさんから。頼んでたの入ったって。昼前に届けて欲しいって伝えといたよ。」
「あら。ありがとう。間にあったのね。明日になるかと思ってたけど。」
メラさんとイシュリナさんが母子の会話を交わす。
前の時は緊張で気付かなかったけど、ふたりの魔素は明るくて柔らかい。
ルシェリードさん達がいる時とはまた違った雰囲気だ。
いつご挨拶しようかなと、タイミングを見ているとイシュリナさんが「お帰りなさい。」と自然に声をかけてくれた。
『お帰りなさい。』
実家に帰ってきたみたいだ。
何だか胸がほんわかする。
「ただいまです。…おばあ様」
私の返事に笑顔で迎えてくれるイシュリナさん。
この間、料理教室に行く前に、正式の場でない時はそう呼ぶように言われたんだよね。
ルシェリードさんがおじい様ならイシュリナさんはおばあ様がいいそうで。
それを横で聞いていたメラさんが楽しそうな顔をしていた。まさか。
「いつの間に。それなら、私はお義母さまだな。この間、フィルドに自慢されてしまったんだ。私も自慢したい。」
「…はい。お義母さま。」
フィルドさん、何言ってんですかあ。
ドラゴンの里でのやり取りって、お2人に筒抜けみたい。恥ずかしいなあ。