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「う~ん。あの詐欺師がなあ。何で転移局なんだ?心当たりないんですよね?」
キィさんはシードさんの報告を黙って聞いていたけど、納得のいかない顔でカイザーさんに確認を取る。
本当に、何で転移局自体を狙ったんだろ。
「ええ。うちは誰もその詐欺師と直接の面識はありませんし。荷物のトラブルもありません。」
黒幕がわかっても、カイザーさんの答えはきっぱりしたものだった。
そうだよね。2時間のサスペンスドラマなら、ここで何か新しい情報が出てくるとこなんだけど、現実じゃこんなもんか。
私も考えてみたけど、カバズさんの件以外で関わったことはないし。
それだって、結局メルバさんがカバズさんを守備隊に運んで、私たちは事情聴取されただけだし…。
ん?でも、事情を聞きに来たひと達は、私たちが守備隊に連れてったとか、連絡しただとか好きにウワサしてたなあ。
ってことはもしかして…。
「カバズさんが守備隊に運ばれたのが原因?」
「ハルカ?何か思い付いたのか?」
あ。口に出してた。
いえ。ただの思い付きで。ホントに。
事件とは関係ないかなあ。
なんて。
「まあまあ。ハルカさんの思い付きは結構いい線いくからなあ。思い付くまま話してみなよ。」
キィさんに考えを読まれた。
クルビスさんも頷いてるし。
共鳴してないよね?うん。してない。
何で誤魔化そうとしたのがバレたんだろう。
「ハルカは魔素が素直だからな。見ればわかるよ。そうかたくならずに、思い付いたことを話してくれればいいから。」
自分でバラしてたあぁぁ!
ダメじゃん。自分。魔素は隠さないと。
いやいや。それより。
聞かれてるんだし答えなきゃね。
「えっと、本当に思い付きなんですけど。その、私が思い返してみても、詐欺師との接点ってカバズさんの件くらいなんですよね。その時のことって、カバズさんをメルバさんが転移で守備隊に運んで、私たちは事情を話すために守備隊に行ったくらいです。
でも、それって、詳しいことがわからない状態で話だけ聞いたら、カバズさんを守備隊に連れて行ったのは転移局の局員だったっていう風に聞こえるんじゃないかって思ったんです。メルバさんはすぐに転移されましたし、目撃者はあまりいません。逆に、あの一件で、私たちはすごく目立ちましたから。カバズさんの魔素が暴走する前に会話してるのも周りの人たちが見てましたし、ウワサになってたはずなんです。」
守備隊に向かう時だって、たくさんの人に事情を聞かれて困ったんだよね。
表向きの理由が決まってからはそれで通したけど、それまでは色々言われてたみたいだし。
「そうすると、後ろ暗いひと達は、何か余計なことを聞かれてるかもしれない。じゃあ、こっちもやっちまおう。でも、私には警護もついてるし、直接は無理だな。みたいな考えになるんじゃないか、なあ、なんて…。」
思ったんですけどね。
あれ。皆さん黙り込んでどうされたんだろ。
2時間サスペンスものでよくある『本人たちは覚えてないけど、犯人にとってとても都合の悪いことをしてたり見てたから、口封じに狙われる』ってパターンかなあとか思ったんだけど。
「そりゃあ、有り得るわ。」
「確かに。」
キィさんとクルビスさんがしきりに納得してる。
え。当たりなんですか?本当に?まさか。