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それからカイザーさんが戻ってきて、衝撃の事実がわかった。
なんと、転移局の近くで不審者がうろついていたらしい。
「私を見て、大層驚いていました。うかつにも『なぜ動ける!?』と叫びましたから、隊士さんに捕まりましたよ。使い走りでしょうね。」
キィさんに勧められて、元の席に戻ったカイザーさんは呆れたように当時の話を教えてくれる。
それは本当にうかつだなあ。
あんな危険物送りつけてくるぐらいだから、もっと腹黒い相手を想像してたんだけど。
下っ端なのかな。カイザーさんもそう思ってるみたいだし。
「ちょっと凄んだだけで、ペラペラしゃべってくれましたよ。」
後から入ってきたシードさんも呆れたように報告してくれた。
ペラペラしゃべったってことは、黒幕の正体とか、なんであんな危険物を送ってきたのかとか、色々わかったのかな。
「報告します。北西の転移局に仕掛けてきたのは、以前、カバズという技術者に詐欺を働こうとしたやつです。狙いは北西の転移局そのものみたいですね。詳しいことは知らされていないようですが、転移局で誰かが倒れてるだろうという話を聞かされてて、それを確認に来たようです。それ以外の話は支離滅裂なので、少し落ち着かせてから調書を取る予定です。」
ヘビの一族のカバズさんは、私が転移局で働く初日に挨拶した染物の技術者さんだ。
相棒のトカゲの一族のルイさんとはよく一緒にいて、喧嘩するほど仲がいいという関係。
私とクルビスさんの結婚式の夜も、ふたりは喧嘩をしていて、事情を聞くとカバズさんは詐欺にあいかけていたことがわかった。
事情を聞いたクルビスさんが捜査を始めてくれていたんだけど、返って口封じのために魔素の暴走を引き起こす術式をかけられてしまい、そこに偶然私も立ち会ってしまったと言うわけ。
その時の詐欺師が今回の黒幕らしい。
あの時もタチの悪いことをすると思ったけど、今回の方がより凶悪さんが増してる気がする。
でも、何でうちに仕掛けてきたんだろう。
北西の転移局が狙いと言ったって、カバズさんの件が理由にしても、やり過ぎな感じがするし。
「そうか。ありがとう。引き続きよろしく頼む。」
「了解しました。後、事後報告になりますが、北西の転移局の他の局員にも警護をつけてあります。」
「ああ。助かる。よろしく。」
「では。」
シードさんが報告を終えて、部屋を出ていく。
キャサリンさん達にも警護がついたみたい。良かった。
狙いが転移局そのものなら、局員は誰でも危険だもんね。
カイザーさんも厳しい顔をしていたけど、出ていくシードさんに向かって胸に手を当てて感謝を示していた。