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「魔素ってのは感情によく反応するからな。ハルカさんがそれだけ嫌がったなら、魔素が追い払うように動いただろうさ。前に隊士たちを気絶させちまったろ?ハルカさんの魔素は強力なんだよ。」
ああ。あの婚約前にぶち切れた時。
そういえば、訓練の最初の時も、クルビスさんとメルバさんのお2人についててもらわないといけなかったんだよね。危険だから。
当時はそれがどういうことかわかってなくて、話がこじれてクルビスさんに感情のまま怒鳴ったら、近場にいた隊士さん達が気を失う程の衝撃波を放ってしまった。
自分では魔素を出した自覚はなかったけど、同じ部屋の物も落ちたりして結構壊れたりして、自分が自分で怖くなったのをよく覚えている。
皆さん丈夫な隊士さんだったから気を失うだけで済んだし、後で笑って許してもらえたけど、もっと強い魔素だったら病室の子供たちに影響したかもしれなかったと聞いて、すごく反省した一件だ。
あれから、どんな場面でも魔素を暴走させたりしないようにって、訓練をもっと真剣に受けるようになった。
今でも、たまにメルバさんやキィさんが様子を見てくれる。
「今はきっちり抑えられるようになってるし、普段のハルカさんを見てたらわかんねえけどなあ。仕組んできた連中もまさか発動前に抑えられるとは思わなかっただろうさ。」
まあ、普通はそうだろうなあ。
荷物を受け取った時点で発動してたみたいだし。
「封印にしてもそうだ。魔素で丸ごと包んでしまうなんて、普通の術士じゃあ出来ない芸当だぜ?それもクルビスに手渡した後も状態を維持してた。ありゃ、いったいどうやったんだ?」
キィさんが興味深々で聞いてくる。
そう言われても、風呂敷みたいに包んだだけですが。
「直接持ってるのが嫌だったので、魔素を布のイメージで広げて箱を包んだんです。解けないように端っこを縛って、そしたらクルビスさんに封印だって言われたんですけど…。」
何をやったか正直に話すと、クルビスさんは目を見開きキィさんは目を輝かせていた。
そんなに変なのかなあ。メルバさんには魔素を使うのはイメージが大事だって言ってたけど。
「魔素を布のようにかあ。成る程なあ。隙間なく包むていうより、その方がイメージしやすいよなあ。それなら、ハルカさんの手を離れても魔素が安定するわな。布として切り離すイメージもしちまってるもんな。」
「それで意図せずして、封印になったわけだな。」
納得がいったのかキィさんはうんうん頷いて、クルビスさんはため息をついていた。
どうやら、風呂敷のイメージが良かったみたい。