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話がまとまって、カイザーさんには今日のところは守備隊に泊まってもらうことになった。
狙われた可能性が高い以上、そのまま帰すわけにはいかないそうだ。
ただ、泊まるといっても荷物も必要だし、明日の指示も出さなければならないからと、警護をつけて一度帰ってもらっている。
私の荷物も一緒に持ってきてもらえるそうで、クルビスさんが離そうとしないので恐縮しながらもお願いした。
「残った2つも心配してるでしょうから、少し話してから戻ります。」
そう言って、カイザーさんは戻った。
私も2人のことが気がかりだったので、お願いしますと胸に手を当てる。
ちなみに、転移局の方にはすでにシードさんが警護を手配してくれてるそうだ。
それを聞いてホッとした私をクルビスさんが撫でてくれた。
「お疲れ様。今日は大活躍だったな。」
大活躍、とは?
例の荷物に気づいたからかな。
「ええ。気づかなければ大変なことになるところでした。」
「それもだが、発動を抑えたことや、その後の封印も見事だった。」
ああ、魔素を弾き飛ばしたとかいうやつ。それと封印かあ。
何度か言われてるけど、ピンとこない。
弾き飛ばしたのは覚えがないし、封印と言っても、直接持たなくていいようにちょっと魔素で包んだだけなんだけど。
こう、風呂敷みたく、キュキュっとね。
「ん~。自覚ないみたいだけどな。ハルカさんがやったのはすごいことなんだぜ?発動用に組み込まれてただろう魔素を、持ち前の膨大な魔素で弾き飛ばしたんだよ。おかげで発動に必要な魔素はほとんど吹き飛んじまった。
普通はそんなことしたら、魔素同士が反発して危険なんだけどな。黒は調和の魔素だから、元の魔素を弾き飛ばすだけで済んだのさ。こりゃ、黒の単色にしか出来ない技だなあ。」
理屈はわかったけど、でもやっぱり覚えがない。
すごく嫌で、触りたくなかったのは覚えてるけどなあ。
「そう、なんですね。自分では覚えが無いんですけど。」
「ハルカはずいぶん嫌がっていただろう?あれだけ嫌がっていたら、他の魔素なんて弾き飛ばされるさ。」
「ええ。すごく嫌で、どっかに行って欲しいって強く思ってました。」
クルビスさんがまだ納得のいかない私に静かに説明してくれる。
嫌がるだけで、魔素って弾き飛ばせるものなのかな。私ホントに何もしてないんだけど。