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私が淹れたポム茶を飲みながら、キィさんやキーファさんの報告を交えつつ、クルビスさんの調書の説明がなされて、私たちにも確認される。
お茶の香りで落ち着いたのか、カイザーさんも私も穏やかに応じられた。
もしかしたらポム茶にリラックス効果でもあるのかもしれない。
良い香りのお茶は気分を楽にさせてくれるしね。
「以上が、ここに来るまでのあらましだ。」
「改めて聞くと、何で北西の転移局なんだかわかんねえな。」
「ええ、ここまで悪質なやり口で仕掛けてくるなんて、これまで無かったことです。」
クルビスさんの説明を聞き終わって、キィさんもフェラリーデさん困惑しているようだった。
そうなんだよね。誘拐の話とか出てきて忘れそうになってたけど、うちの転移局ってこんな狙われ方するような所じゃないんだよね。
規模だって小さいし、北西の地域にあるってだけじゃあ、こんな爆弾よりタチの悪いものを放り込まれる理由にならない。
発動した荷物を受け取った人が確実に意識不明になるなんて、ヤバすぎるでしょ。
「狙いは転移局なのか、個体なのか。それによっても見方が変わると思う。」
「だよなあ。でも、転移局狙いにしても、局長さんに心当りもないみたいだし、北西の地域だからってんじゃあ今回の理由にしちゃ弱いと思うしなあ。」
「個体狙いとすると…。カイザーさん、カウンター業務につく方は決まってますか?」
クルビスさんの意見にキィさんとフェラリーデさんが考え込む。
質問が飛んできたカイザーさんも考え込んでるようだ。
「そう、ですね。決まってはいませんが、私がカウンターにつくのが一番多いです。私は転移陣を起動させられませんので、いつもカウンターか事務仕事をしています。術士の3つは交代で転移とカウンターをやってくれています。」
声が少し震えている。
そりゃそうだ。自分が狙われたと思いますって報告してるようなものだもんね。
今回みたいに、荷物の受け取りなんて方法で術式の被害に合うなら、カウンターのひとが一番危険だ。
そして、我が転移局で一番カウンター業務についているのはカイザーさん。
本来なら局長の仕事じゃないけど、私が来るまで術士1人局長1人でやってたから、自然とカウンターはカイザーさんがやることになっていた。
そのせいで、雨季の前は局長としての事務仕事は早出や残業をしてこなさないといけないことが当たり前だったとか。
特別営業期間の時、疲れたカイザーさんがポツリとそんなことを話してくれて、今は幸せだと言われて涙が出そうになった話だ。
ブラック反対。クリーンでホワイトな職場を目指しましょう。