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カッカッ
またノックだ。
今度は誰だろう。
「失礼します。例の荷物の処理が終わりましたので、ご報告します。」
入って来たのはキーファさんと一緒に行った2人の術士さん。
魔素が弱ってるのを感じる。3人とも疲れてるみたいだ。
「おお。ご苦労さん。それで、どんなやつだった?ああ。このお二方は転移局の関係者だからな。報告の義務もあるし、一緒に話を聞いてもらうことになった。」
ああ、それで。キィさんの話にようやく納得がいく。
関係者だからってこんなに色々聞いて良いのかなって思ってたけど、よく考えたら転移局に危険物が持ち込まれたわけだし、局長のカイザーさんに事情の説明は必要なことだ。
さっきのキィさんとのやり取りも、このまま話を聞いてもらえるかの確認だったなら、よくわかる。
なんだ。わかったら何だかスッキリした。
私はクルビスさんが離してくれないから、どうせ一緒に聞くことになってただろう。
カイザーさんと一緒にっていうのが不思議だったんだよね。
「はい。箱の中に術式が掘り込まれていました。内容は、発動して最初に荷物を受け取った者の意識を奪い取るというものです。」
うわあ。何、その自動スタンガンみたいな機能。
気を失わせてどうしようっていうんだろう。
「さらにタチの悪いことに、意識をうばう術式の後に、魔素を鎮静化する術式が発動するよう組み込まれてました。つまり、発動したら最後、被害者は自力では意識が戻りません。」
「なんつーもんを作りやがる。」
「…本当にタチが悪いな。」
キーファさんの報告にキィさんとクルビスさんが顔をしかめている。
魔素ってようはその人の生命エネルギーだから、意識がなくなって沈静化、つまり弱まるとなると…。
カイザーさんをちらりと見ると、顔色をさっきよりも悪くして目を見開いていた。
そりゃそうだよね。もうちょっとで意識不明の重体になるところだったんだから。
「ただ、幸いなことに、ハルカさんが気付いて発動する前に発動用の魔素を弾き飛ばして下さいましたし、その後も封印して下さいましたので、被害は出ておりません。」
「そうか。時間差の発動型かあ。そう出来るやつはいねえな。魔技師を当ってみるか。」
「それなら、西地区から調べた方がいい。例の荷物を持ってきた男が書いた住所がこれだ。カイザーさんが持ってくれた。」
「おお。そりゃ助かる。ありがとうございます。西地区の山側の工房か。無意識で書いたんなら、関係してそうだな。また、西かあ。」
クルビスさんが送り状を見せて西地区が関係してることを伝えると、キィさんが何ともいえない顔をする。
そういえば、子供たちが誘拐されそうになったのも、毒が流されたのも西だ。やな偶然。
「キーファ。シードが今この工房と例の男について調べてる。下にいるだろうから、協力して調べて欲しい。」
「了解しました。」
「その前に休憩が先な。魔素だいぶ使ったろ。ルドには言っといたから、用意してくれてる。」
「ありがとうございます。」
キーファさんの報告が終わって、退室していく。
その姿を見送りながら、キィさんのつぶやいたことが気になっていた。
また西かあ。
この数か月で、西で事件が起こったのって私が知るだけで3件もあるのに、まだ起こるなんて。
っていうか、私そのどれもに関係してるんだけど。
やっぱり私が狙われたのかも。