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驚きの事実が出たものの、対策は考えておかないといけない。
相談した結果、勧誘についてはしばらくはクルビスさんを理由に断ることで話は落ち着いた。
「中央局の方はお任せください。何か動きがあれば、お知らせします。」
カイザーさんが頼もしげに頷いてくれる。
上司が味方だと、こういう時本当に助かる。
「お願いします。こちらも、また勧誘の手紙が届くようになったらお知らせしますので。」
「ええ。お願いします。」
カイザーさんには例の観光案内みたいな勧誘の手紙は見せてある。
まあ、こんな感じでアプローチがあるけど、無視してますって報告だったんだけど。
カイザーさんも「直接言えないからとは言え、ずいぶん遠回しな方法を取りましたねえ。」と呆れていたっけ。
ただ、観光案内を守備隊で活用する予定だと言うと、それにはとても関心を示していた。
いつか、転移局で情報誌やフリーペーパー的なものを取り扱う日が来るのかもしれない。
まあ、先に各転移局との提携が必要になるけど。そっちが難しいよね。
カッカッ
相談がひと段落したところで、ドアがノックされる。
それまで静かに立っていたリリィさんがドアを開けてくれる。
「失礼する。こっちは何とかなったぜ。」
術にかかっていた男性の相手をしていたキィさんだ。
もう術は解けたんだろうか。
「キィ。もう終わったのか。」
「まあ、かけられてた術はな。きっちり解いたから、もう操られることはねえさ。後は継続的な治療だから、そっちはリードに任せてきた。リリィはもうしばらくこっちにいてくれってさ。」
「了解しました。」
「カイザー殿もお疲れ様です。まだお仕事が残ってたのでは?」
「いえ。後は部下に任せてきましたので、大丈夫です。このまま帰ってもご近所から質問攻めにあうだけですし、それなら事情をきちんとお聞きしてからの方が良いと思いまして。」
キィさんはカイザーさんの返事に頷くとカイザーさんの1つイスを挟んで隣に座りこむ。
お疲れだなあ。人にかけられた術式を解くのは、かけるより何倍も気を遣うそうだから、きっとすごく大変だったんだろう。
「たしかに、その方いいでしょうね。クルビス、調書は終わったのか?」
「ああ。基本的なことは聞いたが、心当りはないそうだ。」
クルビスさんに調書を見せてもらいながら、キィさんも困ったような顔をしていた。
キィさんだって、こんな小さな転移局に心当りがあるなんて思ってないだろうけど、実際狙われてしまったしね。
「まあ、だよなあ。北西の転移局は仕事も丁寧で荷物の扱いも良いから、恨みを買うようなことなんてなあ。こりゃ、あの荷物の中身が何なのかわからねえと、後はわかんねえな。」
おお。普段知ることのない、職場の評判だ。
真面目な話をしてるのに、ちょっとウキウキする。
カイザーさんも心なしか嬉しそうだ。
褒められるのって嬉しいよね。
それにしても、キィさんにも理由はわからなかったんなら、もう後はキーファさんの仕事を待つだけになった。
一体、中身は何だったんだろう。