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「そうか。ありがとう。シード。その工房について調査をしたいから、西と連絡を取ってくれるか?」
「了解しました。一応、族長にも知らせときます。うちの一族なら何か情報が出てくるかもしれませんから。」
「頼む。」
クルビスさんのさらなる指令にシードさんは胸に手を当てて敬礼をし、部屋を出て行った。
そうか。クルビスさんがシードさんに知らせたのは、西の住所だったからだけじゃなくて、例のお客さんがヘビの一族だからだ。
これで少しは彼の身元がわかればいいけど。
でも、工房は空だって言うし、難航しそうだなあ。後で差し入れしてあげよう。
「カイザーさん。西のその工房を聞いたことはありますか?」
「いいえ。西に知り合いなんて…。」
調書を再開したクルビスさんはカイザーさんに心当たりがないか聞いている。
私はもちろん無いから、黙ったままだ。
一応、西に何人か知り合いはいるけどね。
それはクルビスさんも知ってる人たちだし、聞きたいことがあればクルビスさんが確かめるだろう。
カイザーさんも心当たりがないのか、弱々しく首を横に振るだけだった。
当たり前か。カイザーさんは北地区の出身だし、務めだってずうっと北地区だもんね。
「では、最近何かトラブルはありませんでしたか?ここ1ヵ月か2ヵ月くらいで。何でも良いんです。思いつくまま話して下さい。」
えーと。ここひと月ふた月のトラブルっていったら、中央局の視察でしょ、その前がちょっと空くけどシェリスさんの荷物が壊れてて、カイザーさんが守備隊に届け出たんだよね。
でも、あのお店は南地区だし、今回は無関係だ。
「南地区の店とならありますが…。お客さまの荷物の中身が破損していたことがあって、それを守備隊に届け出ました。それ以外、思い当るトラブルはありません。」
カイザーさんにとって、中央局の視察はトラブルじゃないんだ。
いやいや、それより、あんな気持ち悪い危ない物を送られる理由がないことの方が大事だ。
小さな小さな転移局なのに。
もしかして、目的は転移局じゃないのかな?
個人が目的とか?私だったりして。いやいやそんな。
そこでクルビスさんとばっちり目が合う。
「そうですか。」
うわあ。すぐにそらされたけど、クルビスさんの目がハルカかもって言ってた。私も思ったけど。
あの転移局のメンバーの中で狙われる可能性が一番高いのは私だから。
うーん。身が危険にさらされる程の狙われ方なんて、式の前だけで終わったと思ってたのに。
こんなのがしょっちゅうあるんじゃ、私、仕事続けられないんじゃない?