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「俺が連れて行こう。しばらく離れるのは無理だからな。調書も取っておく。」
「では、リリィも一緒に行ってもらえますか?調書の立ち会いをお願いします。」
「はい。」
クルビスさんが付添いを申し出てくれて、リリィさんも加わることになり、私とカイザーさんは前に事情聴取した会議室に連れて行ってもらうことになった。
隊長さんの仕事じゃない気もするけど、今のクルビスさんに私と離れる気はないみたいだから良いんだろう。
キィさん達にも「クルビスをよろしく」ってお願いされちゃったしね。
心配かけてごめんなさいってちゃんと言わなきゃ。
「お待たせしました。」
リリィさんが香ばしい香りのお茶を注いでくれる。
これクッキー茶だ。以前、リビさんとこの裏の喫茶店で飲んだ紅茶。
「香ばしい香りのお茶ですね。」
「クッキー茶です。この種類のお茶には心を落ち着かせる作用もありますので、温かいうちにどうぞ。」
紅茶は久々だなあ。
暑くなってからジュースが多かったから。
「いただきます。」
私からお茶に手を付ける。
口に含んだとたん、クッキーみたいな香ばしい香りと紅茶の味が通り抜けて、身体の力が自然に抜ける。
ああ。私緊張してたんだなあ。
そりゃそうだよね。異常事態に遭遇してたんだもん。
「私も。いただきます。」
そんな私を見て、カイザーさんも遠慮なくお茶に手をのばした。
そして驚いたように目を見開いて、それから満足そうに目を細める。
「いい香りです。美味しいお茶ですね。」
「お好みで蜜もどうぞ。」
それからしばらく、お茶を堪能してまったりする。
カイザーさんの様子も落ち着いたみたい。さっきまで気を張ってたもんね。
「では、そろそろ。カイザーさん、ハルカ。二度目になりますが、当時の状況をもう一度教えてもらえますか?」
私たちがひと心地ついたのを見計らってクルビスさんが調書を取り始める。
起こった時間や場所など、細かく聞いては記入していった。
ホントに調書取られてるんだ。
うわあ。こんなに間近で見るのは初めてかも。
「ええ。送り状を書くのも問題なくて、様子がおかしいとは思いませんでした。…ああ。そういえば、送り状を持ったままでした。これがそうです。」
カイザーさんがポケットから送り状の紙を出す。
ヘビの一族の文字らしく書かれてる住所はどこかわからないけど、字はしっかりしたもので、あの意識のない人が書いたものには見えなかった。
「西地区、工房街西、ミーシャの工房、オレット?どうしてこの住所を。」
え。西地区?
西地区の工房って、子供たちが集団で誘拐されそうになった所だ。
「もしかして、あの青年に関係してる住所でしょうか?操られてるなら、複雑なことは命令出来ませんし。偽の住所を書かせたりは難しいでしょうから。」
「そうかもしれない。リリィ。至急これをシードに渡して、調べてもらってくれ。」
「はい。」
クルビスさんの指示に従って、リリィさんが急いで部屋を出ていく。
何だかまた厄介なことに巻き込まれそう。