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「持ってみた感じだとフタしてる間は大丈夫そうだなあ。開けると本格的に発動しそうだ。発動のスイッチになるんだろうが、周りにべったりついてる魔素がまた嫌な感じだな。操作系に長けてるやつか?」
「魔素で箱が見えませんね。では、外側の魔素の無効化が先ですね。」
かなりの危険物だと判明した例の荷物をキィさんとキーファさんが検分していく。
周りの術士さんに見せながら、でも決して触らせないようにしていた。
「だなあ。これはキーファに任せるわ。俺の魔素じゃあ、万一があるかもしれん。念のため、ミカとキースは魔素で覆って周囲への警戒にあたってくれ。俺はあっちの兄さんを見るよ。」
「「「了解しました。」」」
キィさんの指示にキーファさんと、同じく青の一族の男性の隊士さん、そして深緑の森の一族の女性の隊士さんが胸に手を当てる。
たぶん、キースさんが青の一族の隊士さんで、ミカさんが深緑の森の一族の隊士さんだろう。
「キ」で始まる名前が青の一族では多いそうだし、ミカなんて日本人っぽい名前をつけたがるのはあー兄ちゃんの影響を受けたエルフだけだから、たぶんあってると思う。
3人は例の荷物を持って別の場所に行ってしまった。
後でクルビスさんが教えてくれた所によると、中が何かわからないものの場合は専用の小部屋で解除作業を行うらしい。
「さて、そっちの兄さんは。あー。話に聞いた通り、自分の意識がないなあ。暴れないのは助かるけどなあ。」
隊士さんに両側から挟まれてる青年は、立ったままで何の反応も示さない。
完全に意識がないわけじゃないんだよね。
自分の足で立ってるし、誘導されれば歩くことも出来る。
でも、自我っていうの?それがない感じだ。
「リードはどう思う?」
「そうですね。カイザーさん。確認しますが、声は出さなかったのですよね?」
「はい。頷いたりする程度で、声は1度も出しませんでした。」
「ハルカさんも。間違いありませんか?」
「はい。声は聞こえませんでした。」
フェラリーデさんが私たちに声を聞いてないことを再度確認する。
そう。あまりに静かで、それで気になってお客さんを見たんだよね。
そしたら、あの気持ち悪い荷物があって、慌てて止めに入ったんだ。
今思い出してもゾッとするなあ。
「ありがとうございます。それなら、強い催淫にかかっているのでしょうね。今までに見た症例と一致します。」
「成る程なあ。それで、魔素に乱れが見えないわけか。ってことは、荷物を持っていくまで指示されてたんだな?」
「ええ。指示を完了したから動かなくなったんですね。」
キィさんとフェラリーデさんでヘビの青年の目の前で手を振ったりして反応を確かめながら、原因をつきつめていく。
催淫かあ。嫌なものだよね。
私もかけられそうになったけど、他にもあちこちで被害があったって聞いてる。
その被害者みたいだ。