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そういえば、北の術士部隊って青の一族が多いけど他の一族もいるんだよね。
青の一族が多い上に、私が接触するのはキィさんとキーファさんが多いから、ついつい忘れてしまう。
だからゲインさんって術士部隊のひとだって気づかなかった。
私の警備には戦士部隊のひとがついてると思ってたしなあ。
最近忙しいらしくて、固定のメンバーじゃなくなってるのは知ってたけど。
でも、数の少ない術士さんが混じってるとなるとちょっと話が違うなあ。
クルビスさん。私に言ってないことが夢の他にもあるんじゃない?
後できっちりお話聞かせてもらうんだから。
「ハルカ。封印を解いてくれ。」
「っ。はい。」
周りの様子に気を取られてると、クルビスさんに呼ばれて急いで例の荷物に近づく。
封印って言い過ぎじゃないかなあ。
ちょっと魔素で包んでキュキュッとしばっただけなのに。かた結びしたけど。
えっと。ここを持って、ここに通して、うん、ほどけた。
「ほどけました。」
さあ。どうぞ。
何で視線が私に向いてるんだろう。しかも術士部隊から。
「…すげえよなぁ。ハルカさん。本気で隊士目指さねえ?」
「隊長。そういう話は後でお願いします。これが持ち込まれた時の状況を教えて頂けますか?」
突然のキィさんの勧誘に驚いていると、キーファさんが話を戻してくれた。
当時の状況となると、最初に対応したのはカイザーさんだし、カイザーさんから説明してもらった方がいいよね。
「それなら、カイザーさんが。あ。お願いします。」
話を聞いていたカイザーさんが、説明のために近くに来てくれた。
術士さんがひとり側について、例の荷物に近づき過ぎないように気をつけている。
「はい。私がそちらのお客様の対応をしました。様子がおかしいのに気づかなかくて、そのまま通常の荷物の受け取り作業を行いました。その時は、送り状に文字も書いていましたし、頷いたり反応はありましたね。
荷物を受け取ろうとした時、ハルカさんが大きな声で止めてくれて、荷物を代わりに受け取って下さったんです。その時にはもう今のようにうつろな目で動かなくなっていました。」
「ハルカさん。手を見せて下さい。」
カイザーさんの説明で私が荷物を受け取ったと聞いて、フェラリーデさんとリリィさんが駆け寄ってきて両側から私の手を取る。
特にケガもしなかったし、大丈夫なんだけど。
「特に魔素の乱れも術式が移った後もありませんね。本当にあれを素手で持ったんですか?」
持ちましたが。何か。
フェラリーデさんの言葉にコクコクと頷くと、ホッとしたような魔素をリリィさんから感じた。
「さすがですね。」
「ハルカさんでなけりゃ、危なかっただろうなあ。」
続いたキーファさんとキィさんの言葉に、今さらながら自分がかなり危険なことをしたんだと気づく。
ええ。あれってそんなに危ないものなの?
たしかに、よどんだ魔素で気持ち悪かったけど。
カイザーさん達には触らせられないって思ったのは正解だったみたい。