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美味しい果物は名前をベガスというらしく、何だかお金持ちになれそうな名前だった。
凍らせた果物はシャクシャクと食感も良く、シャーベットぽい感じだ。
こっちの果物ってどれ使ってもこんな食感になるのかなあ。
それなら、つぶしてシャーベット状にしてもいいよね。
それにしても、皆さん食べるの早い。
私はまだ半分くらいしか食べれてないのに、カイザーさんはじめ、キャサリンさんもデリアさんもヒョイパク食べている。
頭キーンてならないのかなあ。
果物なら平気とか?
もしかして、かき氷紹介するたびに皆さん一気に食べちゃうのって、これが原因とか?
果物なら氷単体を口に入れるよりキーンってならないし、一粒づつ食べるものだからかき氷みたいにザクザクと口に放りこめないもんね。
う~ん。じゃあ、シャーベットも危険かもしれないなあ。
皆、かき氷だって頭キーンってなるのに食べるの止まらないみたいだし、そんなのばっかり増やしてもねえ。
今食べてる某氷菓の実みたいな凍った果物で十分だし。
あ。でも自分用にスプーンで食べる滑らかタイプも作りたいなあ。
メルバさん早く自動ミキサー完成させてくれないかなあ。
ルドさんとこの試作器見たきりなんだけど。
「いらっしゃいませ。」
ん。お客様だ。
カイザーさんがすかさず受け取りに出る。
「はい。では、こちらのノートに必要事項を書いていただけますか?」
テキパキと手続きを進める様子はさすが局長だ。
まあ、他所の局長さんはカウンターなんてやらないけどね。それは言わないお約束だ。
「はい。結構です。お代は4つですね。」
それにしても、相手のひと全然しゃべらないなあ。
声が全然聞こえな…。ゾワワワッ。
「カイザーさんストップゥゥゥ!」
「え。ハルカさん?」
目を丸くするカイザーさんの所に行き、手に取ろうとしていた荷物を奪い取る。
その途端悪寒が最高潮になった。
私の手の中にある荷物らしきもの。
それはよどんだ何かで包まれていた。
うわああ。何これ何これ。
て言うか、今見たら、持って来たひと、目が死んでるううう。
何で誰も気づかないの?
この人たぶん操られてる。
「あ、あの、あなた。大丈夫ですか?」
「…。」
返事ないし。どうしよう。
私の悲鳴が聞こえたのか警護の隊士さん達が駆け込んでくる。
「この人。たぶん術にかかってます。守備隊へ連れて行って下さい。はやく!」
私の話に隣のカイザーさんの目はこぼれんばかりに見開かれている。
後ろでキャサリンさんの「ええぇ!ぎゃ。ハルカさん。それぇ!」の声が聞こえた。
彼女も気づいたみたい。
この気持ち悪い荷物に。
さて、取り押さえられたひとと一緒に、この気持ち悪い荷物も持ってかないといけないよねえ。
でも、たぶん、これカイザーさんには持たせられない。
ううん。キャサリンさんもデリアさんもダメだ。そんな気がする。
うわああん。じゃあ、この気持ち悪いの私が持っていくしかないってこと?
じゃ、じゃあ、せめて、魔素で包んで、きゅって縛って。
ううう。ちょっとはマシかなあ。