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「ハルカさんが二つを知り合いだからと隊士さんに頼んで声をかけて下さったおかげで、あの二つは我に返ったようでした。ここで不思議なことに、険悪な魔素の高ぶりが一旦綺麗に収まったのです。
そして、ハルカさんと顔見知りの私たちがいたことに驚いた様子でした。それからしばらく雑談をして、主にうちの転移局の話をしました。その時には普通に会話ができ、魔素も穏やかなものでした。」
そうそう。すごく険悪だったのに、隊士さんに声をかけられた途端、重苦しい魔素がパッと消えちゃったんだよね。
その後は普通だった。キャサリンさんの心配をしてたくらいだ。なのに。
「ですが、ハルカさんがカバズさんの腕に黒いもやが見えることに気づき、キャサリンさんも何かがまとわりついているようだと言って、守備隊で見てもらうよう勧めました。」
ここで私とキャサリンさんに注目が集まる。
カイザーさんの話を後押しするように、私もキャサリンさんもしっかり頷く。
「私には見えませんでしたが、おふたりに言われたことにカバズさんは動揺し、そこから一気に魔素が感情のままに膨れ上がりました。あまりに異常な事態にどうしようもなく、突然のことに手を出せないでいるところに、長様がいらっしゃったのです。」
カイザーさん、丁寧な説明ありがとうございます。
守備隊の面々は、事情を聞いて難しい顔をして考え込んでいる。
ホント、あの急な変化には驚いた。
腕の黒いモヤがカバズさんを包むように大きくなって、そしたら、険悪な魔素に変わってしまったんだ。
余りに急な変化に、黒いモヤが見えなかったルイさん達も距離を取っていたっけ。
あれが術式によるものだとすると、ずいぶんとタチの悪いものだ。
カバズさんは色のことで苦労してるみたいだけど、善良な技術者だっていうのは前回の時に聞いている。
だから、そんな術式にかかる機会自体なさそうなんだけど…。
「そうですか…。事情はわかりました。カイザーさんありがとうございます。では、その術式の発動を見たおふたつにお話をお聞きしたいのですが。」
ああ、私たちが見たやつも話すんですね。
まあ、カイザーさんには見えてなかったわけだから、見たひとの話も聞いておきたいよね。
「ああ。その前に、失礼。来ましたね。」
フェラリーデさんが会議室のドアを開けると、ドアの前にはノックしようとして固まっているキィさんがいた。
術式のことならプロの意見がいるとは思うけど、事情聴取にもキィさん?
隊長さんがそろい踏みって、もしかしてあの黒いもやって結構ヤバいものだったとか?
うわあ。仕事初日から、どんなフラグ?これ。