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「そんなに近くにいるなら知り合いでしょうね。」
「ああ。だから、あの時差し入れてくれた女性である可能性が高い。ハルカは彼女の店も知っているし、調理器具のことにも関係しているから…。」
クルビスさんも彼女でなければいいと思ってるようで、言いにくそうにしている。
倒れる私の傍にいるということは、シェリスさんだって危険な可能性が高いんだもんね。
お式の後のデートの時、シェリスさんが差し入れてくれた料理はとても美味しかった。
苦労して南から北に来たという話も聞いているし、調理器具の嫌がらせのこともつい最近だ。
出来るなら、巻き込まれないでほしいけど…。
クルビスさんの様子からすると、実現しそうな予感は強まってるんだろう。
「そうですね。あまり接触しすぎないようにします。料理教室も無事に終わりましたし、外に出るのもしばらくは仕事くらいですから。街中でばったりっていうこともないでしょうし。」
「そうしてくれ。だが、リビの店に行くんだろう?」
「ええ。でもすぐにとはいきませんから。挨拶に行くにしても、先にウジャータ様に連絡を取りませんと、今日も紹介していただきましたし、勝手にはできません。場合によったらお任せすることもあるかもしれませんね。」
さっきいろいろアイデアを出してもらったけど、リビさんのお店を紹介したのはウジャータさんだから、先にそちらに連絡を取らないといけないよね。
その辺りのこともルドさんに明日話しておこう。
もしかしたら、ウジャータさんには在庫を抱えてくれるお店の心当りがあるかもしれない。
今は扱ってなくても、料理教室と連携でなら引き受けてくれる所もあるだろう。
そういうのも相談したいしね。
今日迷惑かけたことも考えると、リビさんに一度はご挨拶に行くにしても、そういうのが決まってからでないと。
となると、今夜にでもウジャータさんへの手紙を書いておこうかな。
上手く連絡が取れれば、次の休みにはリビさんにご挨拶にいけるかも。
「そうだな。そちらも決まったら教えてくれ。もし挨拶にいくなら、俺も一緒に行くよ。」
そうだよねえ。街に出るならクルビスさんも一緒の方がいいよね。
夢のこともあるし、シェリスさんとばったり出会ったりするかもしれないし。
他の隊士さんに警護してもらってても、夢の内容を知ってるのと知らないのとでは違ってくるしねえ。
ああ。それにしても、自分が倒れる話なんて聞いてても気持ちいいもんじゃないなあ。早く終わって欲しい。