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今回は切りの問題で長めの1800字ほど。
「あらあら。ルーシィったら、そんなこと言ってましたの?」
イシュリナさんの話にウジャータさんが反応する。
どうやら、来られなかった調理師さんと知り合いみたいだ。
「ええ。私がちゃんと教えてあげるからって言って、中央の方に何とか連れて行ったの。あの子の伴侶と宥めすかしてやっとよ?ハルカさんにも会いたがっていたから、機会があったら会ってあげてもらえるかしら?」
「ええ。もちろんです。」
ガリューさんもそうだったけど、そんなに習いたいって思ってもらえるって、すごく光栄なことだ。
できればお会いしたいなあ。中央の産休施設にいるんだよね?
ちらりとクルビスさんを見ると頷いてくれた。
それを見ていたイシュリナさんが提案してくれる。
「じゃあ、次にあなた達の休みが合う時はどうかしら?連絡をくれたら、段取りはつけるわ。」
「まあまあ。素敵。次のお教室もまだ決まっていませんし、よろしいのではありません?」
ウジャータさんの後押しもあって、次の休みにはドラゴンの調理師さんを訪ねることが決定した。
イシュリナさんは「決まったらすぐに連絡ちょうだいね。」とウキウキ顔だ。
「メラにも連絡するわ。あの子も籠りだすと中々出てこないから。」
お義母さまのメラさんもメルバさんの影響で研究や発明に熱心なんだよね。また研究づけになってるみたいだ。
クルビスさんもワーカーホリックだけど、メラさんもそういう方面は同じだと思う。
中々帰らないっていうクルビスさんを連れて顔を出せる貴重な機会だ。
クルビスさんの許可も出たし、家族団らんさせてもらおう。
「では、次のお教室はそれが終わってからで。次の次のお休みが決まったらお知らせくださいな。その都度募集をかけて、今日くらいの少数で開きましょう。お教室の回数が多ければ、不満も出にくいでしょうし、そのように告知いたしますわ。」
「ありがとうございます。休みは決まり次第お知らせします。」
こういう面倒な部分はウジャータさんが取り仕切って下さってるから本当に助かる。
ガリューさんの件だって、ウジャータさんがいなかったら、私に会えないことに不満を爆発させて魔素を暴走させてたかもしれないし。それくらいの勢いだったもんね。
いろんな人の助けがあって、ようやく今の立場にいられるのを感謝しなきゃ。
シーマームへの手土産だって良い情報が手に入ったし、無駄にしないように頑張らなきゃね。
今後の話が決まると、長居をしてもアレなので、ウジャータさんに別れを告げて帰ることになった。
来た時に使った詰め所に行くと、驚く人に出迎えられる。
「おお。無事に終わったか。我が伴侶に孫たちよ。」
「あら。アニエス。迎えに来て下さったの?」
そこにいたのは黄金の鱗を持つドラゴンの長、ルシェリードさんだった。
顔は伴侶に甘いドラゴンの顔だけど、いつもの堂々とした魔素に少しの心配を感じる魔素をまとっているから、きっとクルビスさんの夢のことで心配して来てくれたんだろう。
「もちろんだ。伴侶を1つで歩かせるなどありえない。我が孫たちよ。元気そうで何より。」
「おじい様も。私たちは伴侶共々健在です。」
「それは重畳。」
堅苦しい挨拶に聞こえるけど、無事を確認するような内容で、ルシェリードさんがホッとしたのが見て取れる。
心配かけちゃったなあ。今度のお休みでは美味しいものたくさん作って感謝しよう。
夢の件は結局何も起こらなかったけど、不発だったってことなんだろうか。
でも、クルビスさんは教室の間中、私の周りへの警戒は解いてなかったし、表面は取り繕ってたけど口数も少なくて余裕がない感じだった。
「とっても楽しかったのよ!ねえ?」
「ええ。楽しい教室でした。」
「ふたつとも今度の休みに帰ってくるんですって!ルーシィに会いに来てくれることになったの。」
「おお。それはありがたい。あの子は参加できなくてずいぶん拗ねていたからな。あのままでは子に良くないと心配していたのだ。出来るなら、一晩ゆっくりしていくと良い。」
「はい。おじい様。」
イシュリナさんがはしゃいで今度の休みに訪ねることを告げ、それを聞いたルシェリードさんの目がごくわずかに細められた。
クルビスさんの表情は笑ってるのに硬いまま。きっと夢の話を気にしてるんだろう。
多分、クルビスさんの様子からして、問題の夢は現実に起こることだと確信があるんだと思う。
そして、今日は起こらなかったけど、これから起こる可能性はまだ残ってる。それを相談したいんだろう。
ルシェリードさんは予知能力に長けたクルビスさんのひいお祖父さんを知ってるから。
ひいお祖父さんが夢をどうやって解釈していたのか、もっと詳しく知りたがっていたもんね。
帰ったら、私ももう一度夢の内容を聞いてみよう。
日が近づくにつれて詳しい情報も見えてくるって言ってたし、最初に聞いたのと内容が変わってるかもしれないしね。