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守備隊につくと、話が通っていたらしくすぐさま医務局まで通された。
中にはフェラリーデさんとメルバさんがいて、何か深刻な顔で話し込んでいた。
「長、リード、戻りました。転移局の方々とを見てもらえますか。その後、リカルドとペッパを見て下さい。」
クルビスさんが声をかけると、こちらに気がついたフェラリーデさんとメルバさんがにこやかに出迎えてくれる。
早速見てもらったけど、警護の隊士さんも含めて魔素の以上は見当たらなかったそうだ。
「調べてみたけど、どうもね~。他の子に移る類のものじゃなかったみたい~。確認したけど、皆大丈夫だったよ~。安心して~。」
メルバさんの言葉に一同ホッとする。
あの状態のカバズさんを見た後だけに、専門家のハッキリした言葉は安心する。
「キィ隊長にも確認してもらいましたが、あれは術式をかけられたものでした。よろしければ、こちらで当時の状況をお聞かせいただけますか?」
フェラリーデさんの言葉に、会議室に移動して事情を説明することになった。
まずはカイザーさんから説明を始める。
もちろん、私はクルビスさんのひざの上です。
ささやかな抵抗は無駄だったことをご報告いたします。まる。
まあ、それで、カイザーさんの説明が、私が警護の隊士さんにお願いして問題のふたりを呼んでもらった所になると、フェラリーデさんに呆れられ、メルバさんには頷かれ、クルビスさんには咎めるようにぎゅうっと抱きしめられた。
うん。危ないことに首を突っ込んだのは反省してます。
でも、あのままほおっておくことは出来なかったんですよ。
「普通、喧嘩の現場を止めるなんて、危険なことを私は部下に許可しません。ですが、あの時はそうするしかありませんでした。ハルカさんの責任ではないことは、ここで申し上げておきます。」
周りの魔素を感じたカイザーさんが私を庇ってくれる。
キャサリンさんもうんうんと頷いて、カイザーさんの後押しをしてくれた。
「あの二つはふだんから良く口論にはなっていました。ですが、それは技術に対するお互いの主張をぶつけるものであって、決して、仲たがいしたり、まして、手が出たりするようなものではありませんでした。」
そうなんだよね。私にもあのふたりが仲悪いなんて印象はないくらいだ。
デートの夜に会った時は、お酒の力もあってヒートアップしていたけれど、事情を聞いた時は詐欺にあったことにお互いを心配していたくらいだ。
いくら幼馴染でも、嫌う要素があったら、仕事まで一緒に組んではやらないだろうし。
キャサリンさんも頷いているから、実際そうだったんだとわかる。
「ですが、あの時は様子が変でした。カバズさんの方は感情の高ぶりが抑えられていないというか、今にも手が出るのではないかというくらい、険悪な魔素を出していたのです。売り言葉に買い言葉でしょうか、ルイさんも同じくらい感情的になっていて、やるのやらないのという物騒な言い合いにまで発展していました。」
そう。そして、言い合いの最中、カバズさんはこぶしを握っていた。
それを見た時、止めないとって思ったんだよね。
技術者の街で手を使った喧嘩は重罪だから。
それは私が街に来た初日に目撃したことだ。